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北海道一周、自転車で走ったよ!?
2010年夏、苫小牧をスタートしました。さて、結末はいかに? 紀行エッセイです。
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2010年7月21日(水) 神が威る岬 (岩内―余市 119km)
昨日はよく眠れなかった。もー、暑くて暑くて。
しかも虫も刺してきたし。もー、痒くて痒くて。
そういえば、松前で一緒になったおじさんが夏用のシュラフを使っていたけど、あれってけっこう涼しいのかな。というか、寝袋の形をした蚊帳があればいいのに。札幌行ったら探してみようと思います。
でもちょっと思った。眠れないのは暑いからとか痒いからとか、そういった理由ではないのではないだろうか。だって、暑かろうが痒かろうが、本当に疲れていれば眠れるはず。きっと眠れないのは疲れが足りないのだろう。というのは、少々暴論でしょうか。まあ、いいや。試しに今日はもっと一生懸命走ってみようと思います。
眠れなかった理由がもう一つ。
ヤンキーがなんだかわかんないけど、夜中、やたら大きな音を立てて車がやってきたのである。こんな寂しいところに人なんて来ないだろうと思っていただけに、その騒々しさにちょっと苛立った。
話し声を聞いていると、どうやら若いカップルらしい。これがまた女の方がキャッキャッ笑うので余計に耳につく。
チェッ、うるせなー。なんて最初は思っていたのだが、途中でピンときた。
わざわざこんな人気の無いところに来るってことは何かコトを始めようとしているのではないだろうか。
そうだ。きっとそうに違いない。頭の中ではいけない想像が広がっていく。心臓の高鳴りを胸に感じながらしばらく待ってみることに。
なにも始まりませんでしたな。
チェッ、期待させやがって。いや、なんでもありません。
今日は珍しくお日様が出ていた。朝、起きて太陽を見るなんて北海道に来て初めてじゃないかい。一週間目でやっとかよ、という思いもなくはなく。
ここにはトイレがないので、坂を下って道の駅へと向かう。
トイレの洗面台で歯磨きをし、ひげそりをしていると、一人の色黒のおじさんが現れた。その不自然な肌の色に、ホームレスなのかも、と思う。無言でいるのもなんだか居心地が悪かったので、わたし、これから積丹半島に行くんですよ、とそのおじさんに話しかけてみた。
「積丹行くんならウニだべさ。安いから食べていきなよ」洗面台で髭を剃りながら鏡に映ったわたしに向かって言う。
「へー、そうなんですか。ちなみにいくらなんですか?」
「千円で食べれるよ」
「なるほど」食べるとも食べないともどっちつかずの言葉を返す。すいません、それ、わたしにとっては全然安くないんですが。

道の駅を出発して二十キロを過ぎたところ、小さな港が見えてきた。ちょうどいいや、ここで朝メシを食べていこう。自転車を停め、少し歩くと、車でご旅行というご夫婦に出くわした。
おはうようございます、と挨拶をし、今日は余市まで行く予定だと旦那さんに言うと、
「気をつけなよ。トンネルが多いからね」とわたしを気遣ってくれる言葉を発してくれた。「とくに余市の手前のトンネルは道幅狭いから気をつけて。あそこは対向車すれ違うだけでもギリギリなんだから。自転車なんか通っているのを見ると、こっちがヒヤヒヤするよ」
なんだか自転車乗りを気にかけてくれる人。とても好感を持ちました。
が、なぜかここからヒートアップ。
「トラックの運転手なんてろくに前なんて見ちゃしないんだから!ケータイいじったりして。だいたい自転車通っているなんて、これぽっちも頭にありゃしない。ほんとやつらは危ないよ!」
どうかしたのでしょうか。トラックとなにかあったんでしょうか。言葉の端々から怨念の匂いが漂ってきます。
それにしても、そんなことを言われたらビビるじゃないの。せっかく北海道のトンネルにも慣れ、余裕も出てきたというのに。とはいえ、気にしても先に進むしかないのですが。
しばらく走ると神威岬が見えてきた。横から見ると、それはまるで獲物を狙っているトカゲのよう。別名、トカゲ岬というのはどうでしょう。え?いまいちですか。
国道を横に逸れて神威岬へ向かう。突如、九パーセントの上り坂が現れた。くそっー。絶対上ってやるー。気合じゃー。
なんとか上りきりました。
そこから少し走り、駐車場に到着。トイレから出てきたばかりのおじさんとちょっと話をする。
このおじさん、五十歳というがまったくそんな年齢には見えない。隆々とした筋肉がノースリーブのシャツからはちきれんばかり。なんでも趣味で山登りをしているとのこと。特に若々しさを感じたのが、その出で立ち。普通の旅行者とは違い、サングラスにハウンチング帽という、なんだかおしゃれな雰囲気を醸し出しているのです。
いいなあ、こんな年でも、旅に出てきて身だしなみに気をつけているというのは。わたしも年を取ったら見習おうと思います。
ところで、この方は車中泊しながら北海道を周っているのだが、気になったのはマナーの悪さだそうです。夜中でもかまわず酒飲んでのドンチャ騒ぎ、周りのことはおかまいなしに発電機をつけて騒音を撒き散らす、そんな輩たちがいるそうなのです。
うーん、驚いた。わたしは車中泊したことがないのでわからないのですが、こんな非常識なことをする人がいるんですね。ちょっと考えればどれだけ迷惑なことがわかりそうなものですが。
「それにしても、ここんとこ天気が悪くなて嫌になっちゃいますよねー」わたしが言う。
「え?そうですか。わたし、ほとんど晴れですよ。一日だけかなあ、曇りだったのは」雨って何?そんなことを言い出しそうな口ぶりでおじさんは言う。
え?ウソ?こっちはほとんど曇りか雨だったというのに。そっちは晴れだったのですか。あーあ、羨ましい。
おそらくこういう人を晴れ男というんでしょうね。
ん?するっていうと、なにかい?わたしは雨男かい?いや、でも、もしかしたらそうなのかも。さすがにこんだけ天気に恵まれないと、そんなことさえ思ってしまう。
駐車場を後にし、いよいよ神威岬へ向かう。坂を上りきると、目の前にはものすごい絶景が広がっていた。
うわー。すげー。まじー。なんだこりゃー。すげえなー。
すいません、言葉が出てこなくて。いやね、もう冷静ではいられないのですよ。
人間って本当にすごいものを目の前にすると、まともな言葉って出てこないもんなんですよね。美辞麗句、そんな言葉をいくら並べようとも陳腐なものにしか思えないという。今、この景色を見て改めてそう感じる。
それでも、一応、わたしの少ないボキャブラリーで説明しますと・・・・・・えーと、緑色の丸みを帯びた物体がうねうねうねっていて、それが先に長く伸びていっている・・・・・・うーん、伝わらないか。
気になった方は是非行ってみてください。決して期待は裏切りませんので。
岬の先端から戻ってくる途中、人とすれ違うたびに、「この先、風が強いから気をつけて下さい」「よかったら写真撮りましょうか」など、自然と口にしている自分に気がつく。
どうやら素晴らしい景色は、人を優しくさせる力があるみたいです。
いや、でもほんと素晴らしいわ、ここ。みなさん、少なくとも一時間はいましょう。
ところで神威岬は「カムイ岬」と読みます。
え?もしかして、カムイって白土三平のカムイと同じ?なるほど、ここからとっているのかも。それにしても神が威るとはよくつけたもんだ。ここには神様が宿っている。まさにそう感じざる負えない景色。名前をつけた人は天才でしょう。
実はわたくし、さっきまでカムイ岬をジンイ岬と読んでいました。そう、音読みそのままなんですね。で、なんで間違いに気づいたかというと、さっきのトンネル気をつけておじさんが、カムイ岬がどうたらこうたらって言っていたから。
あれ?ここから岬といえばジンイ岬しかないぞ。もしかしてそれのこと?で、ガイドブックをよく見てみると、そこにはしっかりと「カ・ム・イ」と書いてありました。「カ・ム・イ」と。
それまでジンイ岬、ジンイ岬って連呼していたわたし。あーあ、恥ずかしいったらありゃしない。
でも、ちょっと言い訳。
ここの近くに神恵内という村があるのですが、そこは「カモエナイ」と読むんですよ。
なんなんでしょう、これ。もー、神を「カム」と読んだり、はたまた「カモ」と読んだり。あーあ、ややこしいったらありゃしない。頼むから、どっちか一つに統一してくれぇ。

次は積丹岬へ向かう。
昨日、道の駅で会ったおじさんは、たいしたことないって言っていたが、果たして・・・・・・。
おじさんのうそつき。いいじゃねぇかよ。
遊歩道のトンネルを抜けるとそこには絶景が待っていた。目の前の海には大きな岩がデーンと鎮座しており、右手を見れば断崖が聳え立っている。
中でも目を引いたのが海の色。青は青なんだけどちょっと今まで見たことのないような青。青というより蒼の方が近いかも。そう、これがいわゆる積丹ブルー。と、ガイドブックに書いてありました。
細い遊歩道を下へと降りていく。海の方へ歩いていき、記念にとばかりに足をそのまま海に浸す。サンダル履きだからできる芸当です。
大きな岩の上からは若者たちがダイブしている。おお、ここは海水浴もできるのか。わたしもつられてダイブ。
なんてするわけないじゃないですか。案外常識的なんです、わたし。
その後、一旦、駐車場まで戻り、今度は灯台のある方へ行ってみる。
と思ったら、目の前の道を遮るように一枚の看板が立っていた。読んでみると、七月二十日に熊が出たので注意してください。みたいなことが書いてあった。
へー、やっぱり熊って出るんですね。というか、七月二十日って、昨日やないかーい。でも、本当に熊って出るんですか。正直、実感湧きません。あまり気にも留めずしばらく坂を歩き、上りきる。
おお、すげー。そこには蒼い海と緑の森が広がっていた。なんじゃ、こりゃ。内地では見たことない光景に思わずテンションが上がる。
しばらく行くと、役場の人が看板を立てていた。ちょっと話しかけてみることに。
「本当にこんなところに熊って出るんですかね?」
「出ますよ。ほら、ちょうど今あそこの木が禿げた場所に二頭いますよ。あっ、一頭いなくなった」
「本当だ。あっ、あそこに一頭いますね。って全然いないじゃないですか!」
そんなノリツッコミをするほど気分が高揚しているわたしなのであった。
さて、景色も堪能したし、そろそろ戻ろうか。来た道を引き返そうとすると、なぜか道の真ん中に人が集まっている。どうしたんですか?と一人の女性に訊くと、「いや、この先で熊が出たんですって」
え?ウソ!マジで?ありゃー、本当に熊って出るんだ。さすがにそうなるとちと怖い。
早速、さっきの役場の人に相談しに行く。下にいる別の役場の人と連絡をとった結果、軽トラで上に残った人たちを下の駐車場までピストン輸送することになった。
残った人は全部で十五人。一回五人ずつ運んだとしても三回あれば運び終える。
「じゃあ、急いでいる人を優先におねがいしまーす」役場の人が頬のあたりで両手を立て、大きな声でわたしたちに呼びかける。
どっと荷台に詰め掛ける観光客たち。荷台はあっという間にすし詰め状態。一、二、三、四・・…十人はいるでしょうか。
中には明らかに急いでいない人も混じっているようですが。
ちなみに軽トラには積載量三百五十キロと書いてある。とすると一人当たりの体重は三十五キロ・・・・・・ってことないですよね。大丈夫なんでしょうか。だいぶタイヤがへこんでいますけど。
え?わたしですか?もちろん乗りませんよ。だってわれ先に乗り込むなんてなんか見苦しいじゃないですか。それにそんなに急いで乗る必要なんてないでしょ。少し待てば乗れるんだし。さらにもっと言ってしまえば、これなら熊に襲われる確率よりもパンクする確率の方が高いのではないだろうか。しかもパンクして熊が出てきた日には・・・・・一応、そこまで計算した上での大人の判断なのです。
十分後、軽トラが戻ってきた。どうやらパンクしなかったよう。当たり前。したらわたしが困る。
残りの人も荷台に乗り込む。荷台に腰掛けるのは不安定でちょっと怖かったが、なかなかの眺め。それに本来だったらこんな車の上から見ることなんてできませんからね。そういった意味では貴重な体験をしたのかも。
駐車場に戻ってしばらくすると、パトカーやテレビ局の車がやってきた。わーお。もしかしてニュースで流れたのでしょうか?見た方がいらしたら是非ご一報を。
積丹岬から国道二百九十九号線へ合流する道はキツかった。そう、もう何度も経験しているダラダラした上り坂。これ、はじめはたいしたことないんだけど、後半になるとじわじわ脚にくるんだよなあ。しかもこんな時に限って快晴。日差しが肌に痛い。
うーん、晴れたら晴れたでこれは問題。もー、天気悪かったら悪かったで文句言うし。まったくわがままなわたしなのである。

とりあえず今日は余市に泊まることに。あっ、そうそう。トンネルは案外大丈夫でしたよ。
役場に行って、コインランドリーやお風呂、ついでに泊まれそうな公園の場所を訊く。するとここの人、奥から詳細な住宅地図を引っ張りだしてきて、丁寧にそれぞれの場所を教えてくれた。しかも、こちらが訊いてもいないのに安い弁当屋まで紹介してくれた。
うわー、なんて優しい人なんだ。ここまでしてもらうと感謝を通り越して感動。思わず胸が熱くなる。ついでにうっすら涙も滲む。
泣いてもいいですか。人にものを訊ねて泣きたくなったのは、これが初めてです。
早速、教えてもらったコインランドリーへ。洗濯しないと着替えがないのです。
待っている間、スポーツ新聞を読む。
ギョッ!目が点になった。いや、巨人のユニフォームがどえらいことになっているんですよ。イナズマやらたくさんの☆マークが。なんなんだ、これは。一瞬、マンガかと思いましたよ。これを見た巨人ファンは暴動を起こさないのでしょうか。人事ながらちょっと気になります。
夕方、銭湯に行く。四百二十円なり。どうやら北海道の銭湯はこの値段で落ち着いているようです。
湯船に浸かりながら、地元の人、二人と話す。そのうちの一人が、まだ二十代後半なのだが、肺ガンを患っている。それを聞いて驚く。とはいえ、言われなければガンだとは気づかないくらい表情は明るい。
話を聞いていくと、やはり初めはかなり落ち込んだそうです。でも、途中から落ち込んでいても仕方ない、明るく生きなきゃ、と思うようになり、一ヶ月くらいで気持ちを切り替えることができたそうです。
ううっ、早い。わたしなら・・・・・ダメだろうな。最低でも一年は落ち込んでいるだろう。いや、もしかしたら二、三年かも。うーん、強いですな、この人は。
風呂から上がり、今日の寝場所である港の公園に行く。
ところで明日はちょっと予定を変更して、ここから四十キロほど山の方にあるニセコに行ってこようと思います。
このままずっと海岸線を走っていてもつまらないし、ちょっと寄り道をするのも面白いかなあって。そんなことを、神威岬で地図を見ていたら、ふと思ったのです。
でも一番の理由は、天候。なんでもこれから数日は天気が悪く、このまま走ると、楽しみにしていた石狩からの海岸線を雨の中で走ることになりそうなのです。そんなわけでニセコあたりで時間をやり過ごそうと思った次第。
寝ながらラジオを聴く。おお!なんとわたしの好きなAORがかかっているではないか。たちまちテンションが上がる。ジム・フォトグロの「Fool in Love with You」、ドゥービー・ブラザーズの「ある愚か者の場合 (What A Fool Belives)」、ロビー・デュプリーの「ふたりだけの夜 (Steal Away)」という ベタな選曲でしたが(あー、フォトグロはそうでもないか)。
いや、でもそんなことは関係ない。自分の好きな曲がかかるだけで嬉しい。しかも、偶然つけたラジオから流れてきたので嬉しさ倍増。なんだか今日は幸せな気分で寝れそうだ。
結局、今日は一日中ずーっと晴れだった。これは今回の旅でははじめてのこと。
素晴らしい景色も見たし、いろんな人と話せたし、一生懸命走ったし。もう、言うことなしの一日。この旅一番の充実した日となった。
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