北海道一周、自転車で走ったよ!?
2010年夏、苫小牧をスタートしました。さて、結末はいかに? 紀行エッセイです。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2010年8月18日(水) カップ焼きそばにしみじみ (苫小牧 15km)
午前七時起床。仕事に行くSさんと一緒にアパートを出る。ありがたいことに適当な場所まで送ってもらうことになった。
朝の苫小牧を走る。道は広くて綺麗。通勤時間帯ではあるが車はスムーズに流れている。
「この道路は最近できたばかりでこの辺りもずいぶん景色が変わってしまってね」相変わらずの爽やかさでSさんは言う。
窓から外を見る。苫小牧の街は整然として綺麗だが、見える景色はどれも画一的でどこか味気ない。
今度は目の焦点を空に合わせる。雲一つない見事な青空だ。太陽の眩しさにちょっと目が眩む。今日も暑くなりそうだな。心の中で一人呟いた。
図書館脇の駐車場で降ろしてもらうことに。いやー、本当にお世話になりました。どうもありがとうございました。
いつかまた会える日を約束して固く握手。車が見えなくなるまで手を振り続けた。そしてもう一度、心の中で叫んだ。ありがとうございましたー!
さあってと、感傷タイムはこれくらいにして。いつまでも湿っぽくしていても仕方ないしね。切り替え、切り替え。
時刻は午前八時。さて、これからなにしようか。とりあえず図書館でゆっくりしようかね。
すぐ目の前にある図書館へ。が、九時半開館。残念。まっ、こんなに早くやっているわけないと思っていましたが。
それじゃあ洗濯。支笏湖へ行く途中に見かけたコインランドリーへ向かう。十分ほど走り、到着。
今日は、これをしなければならないとか、ここまで走られなければならないとか、そういったことがまったくない。今日一日つつがなく終えることができればそれでいい。
そんなことを考えていると、なにか心がとても落ち着いてくる。実は幸せってこんなとこにあるのかもしれない。
♪しあわ~せはこんなとこにある~
え?どうしたの?いきなり歌い出しちゃって。
いやね、今、そのまんまのフレーズを思い出したんですよ。ちなみにこれ、スマップの「Peace!」という曲です。
しかし、そんな幸せを感じる一方、軽く罪悪感を覚える自分もいた。だって、今までずっと走ってきたんですよ。どれだけ走ったか、そのことに価値を置いてきたんですよ。それが急に走らなくていいとなったら本当にこれでいいのだろうか。自分は何か損をしているのではないだろうか、無駄な時間をすごしているのではないだろうか。そんな風に考えてしまったのです。冷静に考えれば、一日くらい走らなくてもどうってことないのにね。
どうやらわたしはまだ、「ことさら結果を重視する」そんな癖が抜けてないようである。これを直すには、しばらく時間がかかりそうだ。
順調に洗濯、乾燥を終える。北海道に来てから何回洗濯しただろうか…函館、余市、札幌、稚内、網走、ウトロ、弟子屈、根室、釧路、新ひだか、旭川、そして今日。意外にもすべて思い出せたことに驚く。走ってばかりいたとはいえ、それほど今回の旅は印象に残ったということなのか。そう考えれば、有意義の時間を過ごしたと言えなくもない。なんだかんだいって、やっぱり来てよかった。
さすがにこれだけ洗濯をやれば慣れた。どこへ行っても、置いてある機械は一度は使ったことのあるもの。初めの頃と違って戸惑うことはもうない。
大きなテーブルの上で洗濯物をたたんでいると、年配のご夫婦が入ってきた。
「おはようございまーす」
明るく愛想のいい挨拶にちょっと驚く。つられてこちらも笑顔で挨拶。
「あれ?どこに入れればいいんだ?」
「お金はどこから入れるんだ?」
「あっ、こっちは乾燥機か?」
チラッと目をやると、ご夫婦揃って右往左往している。どうやらコインランドリーの使い方に慣れてない模様。暇だったこともあり、「このくらいだったら十キロ用でいいんじゃないでしょうか」「両替機ならここにありますよ」などといろいろ教えてあげる。すると、抱きつかれんばかりに感謝された。お礼にパンまでくれた。
いやー、そんなに感謝されるとは。なんか恐縮してしまいますよ。だって、暇だから教えただけなんですよ。言い方は悪いが、暇つぶしで教えてあげたようなもんなんですから。
神奈川からやってきたというこのご夫婦、車中泊しながら北海道を回っているそう。コインランドリーを使うのは今日が初めてだそうです。なるほど。だから戸惑っていたんですね。
わたしもはじめはそうだった。函館で最初に洗濯した時は使い方がまったく分からず五分くらい説明書を凝視していた。一回分ってずいぶんお金がかかるもんだあと驚いたりもした。
お二人としばし雑談。話が弾む。お互い旅行者のためかすぐに打ち解けることができた。
こんな風に、もっといろいろな人と話しておけばよかった。今さらながらに思う。特に前半は、人から話しかけられるのを避けていた。人と話すなんて時間の無駄だと思っていた。話が長くなると、「早く終わんないかなー」そればかり考えていた。
でも、こうやって話していると楽しい。振り返ってみれば、心に残っているのは、壮大な景色はもちろんだが、それ以上にいろいろな人との出会い、過ごした時間だった。
さて、洗濯物もたたんだし、そろそろ行きましょうか。
と思ったが、これから何をすればいいわけ?相変わらずまったく思いつかないわたしなのである。うーん、予定に縛られないっていうのもいいのだが、まったくないというのも困りもん。
というわけで、引き続きお二人とお話することに。すいません、暇つぶしです。
「ここの道の駅はきれいですよ」
「神威岬は是非行ってください」
「知床も絶対です」
エラそうにいろいろアドバイスする。またもやご夫婦、感謝感激。今度はお菓子をくれた。
いや、だから単に暇つぶしで言っているだけで…そんなに感謝されると恐縮して……まあ、いっか。わたしにとっては単なる暇つぶしでも、このご夫婦には有益な情報なのだ。それに、わたしも楽しいし。もういい。深く考えるのはよそう。
話をしながら、なんとなく外を眺める。視線の先に、一台のキャンピングカーが停まった。ん?なんだこりゃ。いやね、そのキャンピングカー、普通のよりもかなり大きく、しかもデコトラ仕様かなんなのかとっても派手なんですよ。
ちょっと興味を覚えたのでしばし観察することに。しばらくすると、運転席から一人のおばさんが降りてきた。顔は朝青龍、体は小錦といった感じで実に迫力満点。金色ラメ入りの黒い服の上では、蛇のような文様が踊っている。
「車は乗り主に似る」のかなんなのか。「傍若無人」という言葉が実に似合いそうな女性である。
見ると、そのままこっちに向かってくる。どうやら洗濯しにくる模様。
「うわっ、こっちに来るんじゃねえ」その威圧感にちょっとのけぞるが、構わず中へ入ってくる。歩く度にズシンズシンと音がしそう。
おばさんは洗濯機に近づき、ぞんざいにドアを開けると、その中にタオルやら服を投げこみ始めた。その姿は、「洗濯当番の相撲取り」にしか見えない。
あまりの迫力に内心ビビる。おばさんは洗濯物を入れ終わると椅子に腰掛け、置いてある雑誌を読み始めた。可哀想な椅子。つぶれないか冷や冷やする。
それにしても嫌だなあ。早く出てってくんないかなあ。だってなにか気に障ることでもしたら、張り手の一つや二つ飛んできそうなんだもん。
なんてことを考えていると、一瞬目が合いそうになる。
うわっ。あぶねー。「何見てんだよ」なんてイチャモンでもつけられたらかなわん。
目を合わせないようにご夫婦と話を続ける。しばらくすると、突然、明後日の方向から声がした。
「あー、それだったら帯広もいいよ」
見ると相撲取り、じゃなくて件のおばさんだった。どうやらわたしたちの会話を聞いていたよう。
「帯広はいいよ。後、食事だったら○○と○○に行くといい。あそこの豚丼は絶品」
その後もいろいろおススメの場所を教えてくれる。ご夫婦の質問にも実に丁寧に答えてくれる。
「お兄さん、これあげるよ」
わたしにはかりんとをくれた。
考え過ぎでした。実にお優しいご婦人でありました。みなさん、人は見た目で判断しちゃいけません。
なんでもこのおばさん、夏になると毎年北海道に来るという筋金入りの北海道フリークだそう。
というわけで、今度は四人でお話。コインランドリーはいつの間にか井戸端会議場にヘンシン。
結局、十二時過ぎまで話しこんでしまった。
「コインランドリーで雑談三時間」
実に貴重な体験をしてしまった。わが人生で二度とないかも。

図書館へ向かう。空はピーカン。抜けるような青空だ。
それにしても暑い。日射しも強い。何度も書いて申し訳ないが、ここは本当に北海道か?まったく北海道に来たという感じがしない。
ところで内地はもっと暑いんでしょ。連日ニュースで騒いでいるし。いきなり帰って大丈夫だろうか。内地に渡った途端、バタッと倒れたりしないだろうか。本気で心配してしまう。
図書館で、雑誌を読んだりネットをして過ごす。
午後一時過ぎ、セブンイレブンで「でっかいやきそば弁当」を買って食べる。
これ、北海道に来てから何回食べただろう。旅の後半の昼食は、ほとんどこれだったもんなあ。ということは、ざっくり言って二十回くらいか。たまに食べない日もあったが、そうするとなにか不思議と物足りなく感じる。これを食べないと一日が終わった気がしないのだ。
そんなに食べるということは、よっぽど好きなんですか?
いいえ、そうでもありません。
しょっちゅう食べていたのは、そのコストパフォーマンスの高さから。二百円ちょっとで千キロ以上のカロリーが摂れるという優れものなのです。
やはり毎日長距離を走るのでたくさん食べないと体がもたないのです。かといって、できるだけ食事にはお金をかけたくない。そんな時に見つけたのがこれ。たしか江差のコンビニで食べたのが最初だったと記憶しております。
そんなわたくし御用達のカップ焼きそばであるが、つい最近、残念なことを知ってしまった。どうやらこれ、北海道限定らしいのだ。ということは、北海道を離れればもう食べることはできない。もしかしたら食べるのも今日が最後かも。そう考えるとなにかしみじみとしてくる。
一人、カップ焼きそばを食べながら感傷に浸る。まったくもって絵になりませんな。
さて、一時半。何しよう。ふーっ、困った。というか、暑いのでどこかで涼みたいところ。
長居できそうな場所を探して、苫小牧の街を走る。しばらくすると、一軒の古本屋が目に留まった。
「あっ、そうだ。本を買おう」突然思いついた。
実はわたし、帰りは船ではなく電車で帰ろうと思っているのです。今は夏休みの真っ最中、北海道に来る時よりも船の料金が上がっている。それなら、18きっぷ(期間限定切符。二千二百五十円で普通列車が一日乗り放題)を使って帰った方が安い。そう思ったのです。
とはいえ、普通列車。さすがに一日では帰れない。二日はかかってしまう。死ぬほど暇をもてあますと思い、本でも読んで時間を埋めようと思った次第。
店内に入って物色開始。お金を節約したいので一番安い八十八円の文庫本コーナーから五冊を選ぶ。しめて四百四十円なり。うへっ、安い。新刊一冊分の値段じゃん。
その後、ユニクロ、ハードオフを意味もなく回り、Sさんと出会ったイオンへ行く。
その中にあるベンチの一つに腰かけ、溜まっていた日記を書く。飽きたら店内を回ったり、雑誌を立ち読みしたりして気分転換をはかる。何回かそれを繰り返していると、時刻は午後七時近くになっていた。
夏の終わりを一番感じるのはどういった時か。もちろん風が冷たくなった、そういった時にも感じるのだが、個人的には日の短さを実感した、その時に一番強く感じる。
北海道を走り始めたときはまだ七月。夜の七時でもまだ日が残っていた。でも、今はすっかり日が落ちている。いよいよ明日には北海道を離れる。夏の終わりと旅の終わりが重なって、なにか一層、寂しさが募ってくる。
なんだか今日は感傷に浸ってばっかりだ。

銭湯を目指し、暗くなった道を走る。北海道でお風呂に入るのも今日が最後だ。
地元のおじさんらしき人が湯船に浸かっていた。ちょっと話しかけてみる。
「わたし、自転車で北海道を一周したんですよー」
やや自慢げに言うと、おじさんは目をまん丸にして驚いていた。
まあ、そりゃそうかもね。普通の人から見たらきっとすごいことなんでしょうね。
おじさんと話している中、印象に残った言葉があった。
「けっこう辛かったことの方が心に残っているもんなんだよね」
そう。そうなんです。まさしくそうなんです。
もちろん楽しかったことや嬉しかったこともしっかりと心に残っている。しかし、不思議と鮮やかに蘇ってくるのは、辛かったり、怖かったり、苦しかったことばかり。
ノシャップ岬の暴風雨、枝幸の雷雨、新ひだかの台風。どれも強く自分の心に刻まれている。今思い出しても背筋が寒くなる。あれは単なる怖さというより「死の恐怖」だった。ほんと、マジで死ぬかと思ったもんなあ。
お風呂から上がり、セブンイレブンなどで時間を潰し、午後九時、ネットカフェへ。
今晩は雨の心配もなく、街中にもいくつか寝床に適した場所があったのだが、最後の夜くらいは豪勢にいこうと思ったのです。まあ、単にネットがやりたかっただけなんですけどね。
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


トラックバック
トラックバック URL
http://ultrakamui.blog135.fc2.com/tb.php/37-ca7baee5
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)



上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。