北海道一周、自転車で走ったよ!?
2010年夏、苫小牧をスタートしました。さて、結末はいかに? 紀行エッセイです。
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2010年8月13日(金) いよいよゴール!?(新ひだかー苫小牧 143km)
朝方、ふと目が覚める。外はまだ暗い。耳を澄ますと雨は降っていた。
うーん、雨か・・・。上がるまでは出発は延期かも。そんなことを考えていたら、すぐに眠りの中に落ちていった。
再び目を覚ます。ケータイを見ると、時刻は四時二十分。ぼんやり外に目をやる。どうやら雨は上がっているよう。ところどころ日も差している。よし、行ける。身支度を整え、五時二十分にスタート。ところで、Jさんとはここでお別れ。同じ方向を走る大学院生さんとは、後で落ち合うことにした。
空を見上げる。ポツポツと雲は浮かんでいるが、空の大半は青い。気持ちのいい青空と一日休んだおかげで心と体の両方が軽い。道も平坦なところが多く、知らず知らずのうちにスピードが上がっていく。いやー、気分がいい。久しぶりの好天に気持ちよくペダルを回していく。
いよいよわたしの北海道一周も今日で終わりを迎える。だが、不思議と感慨深いものはない。一周したからといってこれで人生が終わるわけではない。まだまだわたしの人生は続いていく。あくまでも一つの区切りがつく、そんな感じだ。
大学院生さんと、メールでお互いの位置を確認しながら走る。わたしから一時間ほど遅れているが、どうやら順調に追いかけてきているようだ。
二時間ほど走り、新冠に入る。ここ新冠はサラブレッドの産地で有名な場所。なんでもこの近くには、サラブレッドが望めるという場所があるらしい。早速そこ、サラブレッド銀座公園駐車場に行く。
果てしなく広がる緑の牧場に、まばらだが馬が草を食んでいるのが見える。おお、馬じゃん。いいじゃん、いいじゃん。
でも五分で飽きる。わたしはあまり動物に関心が持てない人間なのである。
競馬好きなら狂喜乱舞するんだろうなあ。そんなことを考えると、もっと自分も喜べばいいのにと思ってしまう。

午後〇時半、むかわの道の駅に到着。ここまで来れば苫小牧は着いたも同然。それほど力を入れなくても後は勝手にゴールできる。
苫小牧東港フェリーターミナルの看板を目にする。東港といえば、わたしが北海道に来る時に降り立った港だ。日はまだまだ高い。ちょっと寄ってみるか。一周することにそれほど思うところはなくなってきているが、やはりスタート地点に戻りきっちりゴールという実感は味わっておきたい。
しばらく走り、フェリーターミナルに到着。あれ?こんなところだったっけ?まったく見覚えがないのである。しばし考えて解かる。あっ、そっか。北海道に着いた時は、船からそのまま上陸したためフェリーターミナルに寄らなかったんだ。
ターミナルの玄関脇に自転車を停め、中へ。乗船時間にはまだ時間があるせいか、広々とした待合所には誰もいない。あまりの殺風景な風景に寂しさが胸の中を通り過ぎる。たくさん並んでいる白い椅子の一つを選んで腰を下ろす。スチール製の椅子がひんやり冷たい。窓からはグレー色した港とそれに対比するかのように青い空が広がっていた。
いやー、本当に終わったんだなあ。ふと、そんな思いが心の底から湧き起こってくる。でも正直、一周したという実感はあまりない。
何かたいそれたことをやったという感じはない。ただ毎日走ってきた。その結果がたまたま一周という形になった。終わってみれば、そんな感じがする。とはいえ、走り始めて十日くらいまでは、本当に一周なんて出来るんだろうか?半信半疑だったというのもまた事実。それこそ函館では、まだ三日目だというのに早くもやめたくなったりした。札幌あたりくらいだろうか、今までどおり走っていけば達成できるのではないか、そう思い始めたのは。今思えば、きっとそれはちょっとした自信みたいなものだったのかもしれない。
しばらくそのままボーっとする。一応、ゴールしたとはいえ、今日はここで終わりではない。後、もう少し走らなければならない。
再び窓に目をやる。空では一羽のかもめが気持ちよく滑空を繰り返していた。
大学院生さんとの落ち合い場所である苫小牧市役所を目指し、走り出す。ここからは一度通った道。その時の記憶が鮮やか、とまではいかないが、それでも確実に思い出されてくる。今思えば、あの時ははるかに不安の方が大きかった。一ヶ月ものツーリングなんて生まれて初めて。野宿の経験もほとんどない。でも、今はあの時と比べて気持ちが落ち着いている。右も左も分からなかったあの頃とは明らかに違う。
「あー、ここだな」
初日、不安の中で泊まった児童公園に立ち寄る。おそらく今なら泊まらないような場所だ。なんでこんなところを選んだろう。今ならそう思えるが、その時はここしかない、きっとそう思ったのだろう。もしかしたら、それが一ヶ月走った成長の証と言えるのかもしれない。証というにはえらくチンケな証だけど。

苫小牧市役所に到着。この近くに入浴施設、泊まれそうな公園、コインランドリーがないか、と訊くと、駅中に観光案内所があるからそこで訊くといい、と職員に言われる。
観光案内所でそれらの場所を確認し終える。ドラッグストアで買い物をしていると、いつもは鳴らないはずのケータイが鳴った。液晶画面を見ると、見覚えのある名前が表示されていた。大学院生さんだ。珍しい、というかはじめてだ。なにやら胸騒ぎがしてくる。不安を断ち切るかのようにすぐに通話ボタンを押す。
「パンク四回しちゃったんですけど、直らないんですよぉ」これ以上ないくらい弱々しい声がケータイの向こう側から聞こえてきた。
え?パンク?しかも四回も?マジですか。それも直らないって。
うーん、四回もパンクするってことはどういうことだ?もしかしてチューブがダメというよりもタイヤになにか刺さったままなのかもしれん。
今、どこ?と訊くと、「苫小牧まで後三十キロくらいのところ」という答えが返ってきた。早速、地図を取り出し確認。えーと、三十キロっていうことは・・・・・・わたしが寄った東港ターミナル辺りか。
あーあ、ツイてない。またなんであんなとこでパンクしちゃったんだろう。思わずため息が漏れる。
というのも、あそこは十キロ以上にわたってお店や民家はおろか自動販売機すらなく、道路自体は広いが両側には延々とたくさんの木が生い茂り、夜に通れば間違いなく幽霊の一つでも出てしまいそうなおどろおどろしい場所なのだ(そもそも昼間通っても心細い)。
ということはもちろん、家のドアを叩いて、「すみません、ちょっと助けて下さい」なんて言うこともできない。だって、その訪ねる家がないんだもん。
そんなことを頭の中で考えていると、「自転車を押して歩いていきますよ」相変わらずの弱々しい声がわたしの耳に届いた。
なに?押して歩いてくる?三十キロもある道のりを?おいおい、マジかよ。歩くっていってもけっこうな距離だぜ。いったい何時間かかるんだ?仮に時速五キロで歩くとなると、三十÷五=六。つまり六時間はかかる計算。ちなみに今の時刻は三時半。とすると着くのは夜の九時半か。
ふーっ、参ったなー。そんな時間まで待たなあかんのかよ。とはいえ、このまま放っておくわけにもいかないし。
「今からそっちに向かうわ」電話の向こう側にいる大学院生さんに告げ、ケータイを切る。
わたしが行ったところで直るかどうかはわからない。でも、行かないよりはマシだろう。ひょっとしたら、なにかできることがあるかもしれないし。
来た道を引き返す。しばらくするとケータイが鳴った。もちろん、かけてきたのは大学院生さん。自転車を路肩の端に寄せ、ケータイに出る。どうやらパンクが直ったのでこちらへ向かうとのこと。ホッ、よかった。これで一安心だ。来た道を戻る。しばらくすると再びケータイが鳴る。嫌な予感。出てみると、大学院生さん。なんとまたパンクしちゃったようです。あちゃー。しょうがない、戻りますか。再び引き返す。しばらくするとまたケータイが鳴った。おーい、今度はどうしたー。少しいらつきながら通話ボタンを押す。
「通りかかった車が拾ってくれて、今、イオンにある自転車屋さんに向かっています」安堵をまとった声が聞こえてきた。
早速、地図を取り出してイオンの場所を確認。
残念。今走っているのと逆方向。おーい、また戻らなきゃいかんじゃないかーい。それも、ここからだとそこそこ距離がある。
もう勘弁してくれよー。さっきから同じ道を行ったり来たり。いったいおれは何をしているんだ。
とはいえ、ここで行かなかったら今まで苦労した意味がない。急いでイオンへ向かう。着いてびっくり。小さい子供なら「迷子確定」のような大きなショッピングモールだったのだ。
うわー。ここから自転車屋を探さないといけないわけか。って、どこにあるんだ、それは?まずはイオン内の地図を探し出さんとな。
おー、あった、あった。大きな入り口の横にそれはあった。えーと、自転車屋、自転車屋、どこだ?
ツイてねー。なんと自転車屋は一番端にあった。今、わたしがいるのがその反対側の一番端。つまり自転車屋に行くためには端から端からまで移動しなきゃならない。その距離ざっと見ても百メートルはある。
くーっ、よりによって一番端にあるとは。もっと気を利かせてせめて真ん中にあれよ、自転車屋よー。
ブツクサ文句を言いながら、なんとか自転車屋に到着。えーと、大学院生さんは?素早く店内をチェック。あれ?いねえぞ。店の中には店員一名と、親子連れが一組いるだけだった。
おいおい、どういうわけ?ようやく会えると思ったのにー。もー、なにやってんだよ。どこなんだよー。
ここは、直接本人に訊いた方がいいと判断。大学院生さんに電話をかけて、本当に自転車屋にいるのか訊いてみることに。いや、別に疑っているわけじゃないんだけど、こんだけあちこち振り回されると人間不信になるんです。
あまりの苛立ちにケータイを持つ手も若干震える。しかし、ケータイの向こうから聞こえてきたのは「お客様のおかけになった電話は現在電波の届かないところか、電源が入っておりません」という人工音声だった。
今度はそうきたか。まったくもー。どうなっているんだよ、これ。
仕方ないので、しばらく待ってかけ直す。すると三コールあってつながった。
「えー、自転車屋にいますよ」ややのんびりした声がわたしの耳に届いた。
「うっそ!だっておれ、今自転車屋にいるよ」
「えーと、ここどこだろう・・・・・・スポーツオーソリティーってとこみたいです」
思いもよらなかった。自転車屋がもう一軒あるなんて。どうも彼はスポーツオーソリティーの自転車コーナーにいるらしい。
早速、地図でその場所を探す。するとなんと一番端、つまりわたしが最初にいたところにそれはあった。
くそーっ。ツイてなさすぎだろう、これ。また戻るのかよ。まるで百メートル走れと言われて走ったら、「実は後百メートルあるんだよ」、そう言われた気分。
結局、イオンの建物をぐるりと一周する形に。一体全体、なにやってんだよ、おれは。自分でもわけがわからくなってきた。
スポーツオーソリティーに到着。やや駆け足で中に入る。店員に自転車コーナーの場所を訊き、そちらへ向かう。
おー、いたいた、大学院生さん。そして、その横には初めて見る男性の姿も。
あー、きっとこの人か、助けてくれたのは。いやー、ありがとうございます。男性は苫小牧在住のSさんといい、自分でもロードバイクに乗っているとのこと。
それにしても、パンク修理しても直らないってことはやはりタイヤにガラスの破片かなんかが刺さっているということなんだろうね。店員さんもそう判断したらしく、結局タイヤごと交換することになった。

しばらくタイヤ交換の様子を眺めていると、「修理まで時間がかかりそうだし、待っている間、メシでも食べに行こう」Sさんが食事に誘ってくれた。
おー、グッドアイディア!いいですね。ちょうどお腹も空いていることだし。そんじゃあ行きますか。
三人でSさんの車に乗り込む。国道をしばらく走り、車は住宅街へと入っていく。おお、なんか知る人ぞ知るっていう感じですね。思わず期待に胸が膨らむ。
住宅街に入ってすぐ、Sさんオススメの中華屋に到着。Sさんに続いて中に入ると、店内はほどよく混んでいた。座敷に上がり、メニューを見る。Sさんは回鍋肉、大学院生さんはSさんオススメのあんかけ焼きそば、そしてわたしは中華といえばこれでしょと、好物の麻婆豆腐をそれぞれ注文。ほどなくして、店のおばさんが料理を運んできた。
わーお。見てびっくり。大皿にこれでもかと言わんばかりに盛られていたのだ。その量の多さに思わず圧倒される。それにしてもおいしそう。見ているだけで涎がこぼれてきそうだ。逸る気持ちを抑え、早速、一口いただいてみることに。
おお!うめぇー。うめぇじゃん。具が分離せずうまく絡み合い、見事な一体感を生み出している。こりゃ、うまいわ。食がすすむ、すすむくん。これで七百円はかなりお得でしょう。
さて、会計の段。Sさんから誘ってくれたということはもしかして・・・・・・そう、予想的中。なんとご馳走していただきました!いやー、ありがたいッス。
その後、Sさんのアパートに行き、シャワーを浴びさせていただく。ありがとうございます。おかげでスッキリです。
「じゃあ、飲みに行こうか」当然、次は飲みでしょ、そう言わんばかりの顔でSさんが言った。
え?マジですか?ウォー。なんという展開。
そうですね、わたしはもう走る必要ないですし。今日はいくら酔っ払おうが無問題。こうなったら勢いで行っちゃいます?いやー、行っちゃいましょう!
再び三人、Sさんの車に乗り込み、苫小牧の飲み屋街へ。もちろんわたしは初めてだが、Sさんは以前にも来たことがあるらしくスナックのママさんらしき女性と楽しそうに話をしている。
・・・・・・え?飲みって、もしかして女の子がいるお店?居酒屋とかじゃなくて?
おー、マジですか!これまた思わぬ展開。
いやー、でも緊張しますなあ。実はわたし、まったくといっていいほど女性がつくようなお店に行ったことがないんですよ。というか、今日で人生二回目という。それももう一回というのが何の因果が知らんが、これまた北海道という。なんなんでしょう、これ。北海道に来たらこういうお店にいかなければならないという見えざる力でも働いているんでしょうか。
Sさんに続き、一軒のスナックに入る。ドキドキするなー。ワクワクするなー。
すぐにお店の綺麗どころ二人が、わたしたちの席にやってきた。
必要以上に肌を露出した服。思わず目の遣り場に困る。顔が火照っているのが自分でもよくわかる。わたし、完全に舞い上がっております。
えーと、いったい何をしゃべったらいいのか。こういう場所に慣れていないもんで、まったく会話の糸口がつかめない。思わずモジモジ。うーん、こういう時はどんな感じで話せばいいのだ?まったくもって困ってしまった。とはいえ、こんなところに来て自分を飾っていても仕方ない。というか、楽しめないしなあ・・・。
えーい、もういい。開き直ったれ!せっかく来たんだから楽しまなきゃ損でしょ。
女の子二人のうち、ちょっと小悪魔的な雰囲気を漂わせたなつみちゃんに狙いを定め、集中攻撃。くだらないことを言って笑わせにかかる。なつみちゃんもすっかり笑顔。あはは。わたしの話、面白いですか。まあ、半分くらいは営業スマイルなんでしょうけど。
その後、写メを撮ったり、胸に手を当てられ、しまいには乳首まで触られたり。ウォー。いいんですか、こんなことまでしてもらって。
いやー、楽しい、楽しすぎます。まさに桃源郷。地上のパラダイスってこんなところにあったんですね。今日はじめて知りました。
結局、Sさんが「そろそろ帰るよ」と声をかけるまで話は盛り上がった。
そして会計。やはりというか、そのつもりだったというか、ここでもSさんのおごり。おお!なんて太っ腹な方なんでしょうか。もう、わたしの理解の範疇を超えております。
その後、ラーメンもご馳走してもらう。Sさんのアパートに戻ると、時刻は午前二時を回っていた。
えー、もう二時なんですか。やっぱり楽しい時間ってあっという間に過ぎるんですね。それにしても二時なら、ちょうど後二時間後には起きていますね、いつもなら。でも、もう関係ないんだもんね。北海道一周したんだもんね。そう、もう走らなくてもいいのです。
そう考えると、どこかわたし自身、一周しなければという思いに縛られていたのかもしれない。今は、達成感というより、どちらかと言えば解放感の方が強いのです。
「鍵渡しておくから、明日はいつ出て行っても構わないよ」全然眠くないのか、Sさんは最初会った時と変わらない爽やかな顔でわたしたちに言った。
すごい、すご過ぎます。いつでもいいなんて。なんて気遣いの出来る人なんでしょう。それに比べてわたしといったら・・・・・・。まったく穴があったら入っていたいとはこのことです。
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