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北海道一周、自転車で走ったよ!?
2010年夏、苫小牧をスタートしました。さて、結末はいかに? 紀行エッセイです。
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2010年8月12日(木) へ?無料宿泊所?なにそれ? (新ひだか 19km)
朝、四時半に目が覚める。そっと目を開け、辺りを見渡してみると、昨日あれほど降っていた雨は嘘のように上がっていた。
今度はやや視線を上げてみる。雲がいくつかぽっかりと浮かんではいるが、空は明るい。しかもところどころ、青空も見える。昨日の寝る時点では、今日が晴れるなんてまったく予想できなかった。当然、今日一日ここで停滞だろうと思っていた。でも、この分なら行けるんじゃないか。空を眺めていたら途端に思った。よし、行こう。行ってやろう。気づいたら寝袋を跳ね上げ、自転車に駆け寄っていた。
いや、待て待て。早まるな。もしかしたらこれは晴れと見せかけておいて後から雨が降るというワナかもしれない。これまでこの北海道のワナに何度引っかかってきたことか。そうだ。容易に気を許してはならないのだ。まずは今日の天気予報を知るのが先なのだ。
開館時間の六時を待って道の駅の中へ。ロビーにあるテレビで天気予報を見るためである。早速、テレビの電源を入れ、チャンネルを回す。どの局もトップニュースで天気情報を扱っていた。しばらく画面を眺める。天気予報によると、昨日降った大雨は日本列島に近づいている台風の影響とのこと。続いて、北海道の今日の予報が画面に流れる。愕然とした。なんと、ほぼ全域で雨なのである。しかも、ゴールである苫小牧は土砂降りの雨という、まったくわたしには喜ばしくない予報。というか、今日一日、日本列島は大荒れの天気だそうです。
あぶね、あぶね。危うく騙されるところだったぜ。やはりさっきの晴れ間はワナだったのだ。まったく油断も隙もありゃしない。
それにしても残念。今日中にゴールしようと思っていたのに。
まー、でも、しゃーないですな。さすがにここまではっきりとした予報なら信じるしかない。おとなしく諦めるしかない。
さて、これからどうしよう。今日一日動かないと決めたので、何かすることを探さないといけないのです。
ボーっと辺りを見渡す。すると、道の駅の案内所兼事務所らしきところにおばさんがいるのが目に入った。ちょうどいいや。このおばさんにちょっと話し相手になってもらおう。
「ちょっと、ちょっと聞いて下さいよ。昨日の夜、台風みたいな大雨でめちゃくちゃ大変だったんですよ。温泉の横に東屋があるじゃないですか。あそこで寝ていたら雨が吹き込んできてもう死ぬかと思いましたよ」
「あらー、そうだったの。それだったらこの近くに無料の宿泊所があるのよ。もー、そこに泊まればよかったのにー」
おばさんはなんでもっと早く言ってくれなかったの?という顔でわたしを見つめてきた。
へ?無料宿泊所?なにそれ?そんなところあるの?
先ほど見た天気予報によれば、今日も昨日と同様の風雨になるらしい。ということは、また昨晩の二の舞になる可能性は大。もし本当におばさんが言うようなところがあるなら、そこを利用しない手はない。早速、そのことをJさんと大学院生さんに話すため東屋に戻る。三人で相談した結果、とりあえずそこへ行ってみて気に入ればそのままそこに泊まる、そうでなければまた戻ってくる、そういう結論になった。

道の駅から五キロほど走ると、おそらくこれだろうと思われる建物が見えてきた。
わーお。なかなかいいじゃん。近づいてみると、それはウッド調のプレハブ小屋。興奮を隠し切れず、引き戸になっている扉を開け中に入る。
おお!いいじゃん、いいじゃん。中は思いのほか綺麗。左手には十人は横になれそうなカーペット、奥には簡単な料理ならできそうな水場。小屋の外にはトイレも。
いい!ここ、いい!思わず三人のテンションが上がる。ここにしよう、ここに決定!だれかれとなく叫ぶ三人。歓声を上げる三人。
いやー、よかった、よかった。なんといっても一番なのは、雨風の心配をしなくて済むということ。やっぱり死なないということがなによりなのです。
近くのセイコーマートで買い出しと食事を済ます。戻ってくると、わたしたちを待っていたかのように雨が降り出した。
あちゃー、予報的中。これで今日一日、停滞確定ですね。
おのおの思い思いにくつろぐ。わたしは寝袋を広げ、その中でごろんと横になった。
さっき食事をしたせいか途端に瞼が重くなる。我慢をする理由がないので目を閉じる。雨が窓ガラスを叩いている。眠りますか。どうせ今日一日することはないのだ。
どのくらい眠っただろうか。目を開け、ケータイを見る。液晶表示されている時刻を確認。十一時半過ぎだった。
「あっ、自転車のライトを忘れた」
突然、思い出した。自転車に目をやると、やはりハンドル部分のあるべき場所にライトはなかった。
うーん、どこで失くしたんだろう。わたしの脳細胞が高速回転で動く。と思った瞬間、すぐに止まる。あっ、そっか。たしか昨日の夜、懐中電灯代わりにするために外したんだ。
うわー、やっちまったよー。失くしちまったよー。
どうしよう。と思うまでもなく、再び頭の中で計算が始まる。ライトの値段はおよそ三千円。戻るとなるとまた五キロの道のりを走らなければならない。しかも外は雨。果たしてそこまでして戻る価値はあるのか。三千円の価値はあるのか。さらに計算する速度が上がる。頭の中でなにか小さな黒い粒がものすごいスピードで交差する。散々動いたあげく、ほどなくしてそれは止まった。言葉にすると長いが、時間にすればあっという間の出来事。そして出て答えは。
「価値アリ」
そうですか。それじゃあ、戻りますか。
幸いなことに雨は小降りになっている。中に入れてあった自転車を外に出し、さっき走ってきた道を戻る。来る時は短く感じたが、戻るとなると長く感じられた。
十五分ほどで道の駅に到着。最初に泊まった東屋、雨風に追い出されて移動した温泉施設の軒下、次々と探してみるが、どこにも見当たらない。最後のあがきとばかりに温泉のフロントで訊いてみたが、「そういった届け物はありませんね」というつれない答えが返ってきた。
あーあ、三千円。もったいないことしたなあ、三千円。これって言うならば千円札を三枚落としたようなもんでしょ。そんな情景を思い浮かべたら余計落ちこんできた。
仕方ない、戻りますか。まったくの無駄足だったなあ、と落胆しながら自転車に乗り、走り出す。その時、何か固いものが足に当たっているのに気がついた。
あっ、そうだ!思い出した!失くしちゃいけないと思って、寝る時、ポッケトに入れておいたんだ!
いやー、すいません。すっかり忘れておりました。
それにしても、あれだけ自転車を漕いでいるのに気づかないとは。まったくあわてんぼうなわたしなのである。

無料宿泊所に戻る。しばらくすると突然、雨が激しく降りだした。とはいえ、ここならいくら降っても無問題。建物の中なら雨の心配はまったくないのだ。
窓から外を見る。いっこうに雨が止む気配はない。やはり停滞して正解だったよう。
その後、三人でおしゃべりしたり、寝たり、地図を見たりして時間をやり過ごす。相変わらず雨風がすごい。というか、ここは単なるプレハブなので、外の音がダイレクトに中へ伝わってくる。車やバイクが走り去っていく音、ゴォーンと波が打ちつける音。とくにこの波の音、台風が近づいてくることを如実に知らせてくれる。
午後九時過ぎ消灯。明日はゴールの苫小牧。わたしの北海道一周もいよいよ終わりを迎える。ゴールの瞬間を思い描きながらそっと目を瞑る。果たしてその時、わたしの心の中にどんな感情が起こってくるのだろうか。達成感?満足感?いや、もしかして何も感じないのかも。そんなことを思い巡らせているうちにすぐそばで鳴り響いていたはずの波の音が次第に遠のいていくのを感じた。そっか。わたしはもうすぐ眠りにつくのか。そして次に目を覚ました時には、いよいよゴールの苫小牧に向けて走るんだな。それが眠る前、わたしが最後に考えていたことだった。
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