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北海道一周、自転車で走ったよ!?
2010年夏、苫小牧をスタートしました。さて、結末はいかに? 紀行エッセイです。
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2010年8月11日(水) このままじゃ確実に死ぬ (広尾―襟裳岬―新ひだか 114km)
朝、目を覚ますと、昨日に引き続き外は一面の霧だった。しかも見上げれば、どんよりとした曇り空。
あーあ、今日は襟裳岬に行く予定なのにー。これじゃあ岬からの景色は望めそうにもにない。自分のツイてなさに肩が落ちる。
しばらくすると、テントの中から大学院生さんが起き出してきた。見ると、彼も落胆の表情を浮かべている。しかも、わたしよりもその表情は色濃い。実は、わたしよりも彼の方が楽しみにしていたのです。
準備して、午前六時すぎに出発。買い出しのため、すぐ近くのセイコーマートに寄ると、一人の自転車旅行者がいた。
あっ、昨日セイコーマートで見かけた人だ。実は、昨日、浦幌の道の駅の近くのセイコーマートでも彼を見かけていたのです。その時は声をかけなかったが、さすがに二回も会うっていうことは何かの縁。声をかける。やはりそうでした。しかも話をしていくと、つい最近まで金丸くんと同じ民宿で働いていたことが判明。
わーお。びっくり。斜里で出会った金丸くんは、わたしと同じ日にウトロに着き、そのままとある民宿で急遽働くことになったのです。そこでこの方も働いていたという。
いやー、驚いた。こんな偶然ってあるんですね。彼はJさんといって、わたしたちと同じ襟裳岬へ向けて走るそう。
というわけで、なんとなく一緒に走る感じになる。しかし、あっという間にバラける。やっぱりみなさん、それぞれのペースがあるんですよね。
はじめは快調に走っていたわたしであるが、次第に足が上がらなくなってきた。気がついたら、前方にいたはずの二人の姿はとうに見えなくなっている。
いやー、ダメ。なんか体が重いし、眠い。そりゃ、そうだ。昨日はなんだかんだで結局、百五十キロ以上は走ったんだから。でも、大学院生さんも同じくらいの距離を走っているわけだしなあ。その差は何?多分、年の差というヤツなんでしょうね。
気力を振り絞って走る。とはいっても相変わらず体は重い。やっぱりだめ。眠い。港近くのわずかばかりにあった草の上にマットを敷き横になる。しかし、いくら経っても回復せず。このまま寝ていても埒が明かないので、気合を入れて走り出す。
霧の中をひた走る。なんでもここは、絶景が見えるという黄金道路という道だそう。ちなみに、黄金を敷き詰めるくらいの費用がかかったというのが名前の由来(←ガイドブックの受け売りです)。
しかしこの霧、である。当然見事な景色なんか望めるわけもない。
もういい、いいよ。景色なんてどうでもいい。贅沢なんて言わない。せめて雨さえ降らなければそれでいい。そう割り切ることにした。
でも、降ってきちゃうんですね、雨が。しばらくすると、灰色の空からパラパラと雨が落ちてきたのだ。
おいおい、マジかよ。最悪じゃん。景色が見えない上に雨まで降ってくるなんて。一体全体、おれはなんのために走っているんだ?とたんに気が滅入る。
途中、道の脇にあった展望所に寄る。ちょっと休憩。景色を眺めている人がいたので、今日の天気を訊いてみることに。
「今日はずーっと雨ですよ」
ガーン。やはりそうですか。ということは、今日一日雨の中を走らなきゃいけないってことですよね。そうだと思っていたが、はっきり言われるとやはりショック。
でも走る気しねー。早くも戦意喪失。まだ二十キロも走っていないのに。今日の予定は百キロ先の新ひだかの道の駅まで。っていうことはなに?後八十キロ以上走らないといけないわけ?この雨の中を。
うわー。無理でしょ、それ。というか、もう今日はここで切り上げたいくらい。といっても、わたしの性格上、そんなことはできないんですが。
相変わらず雨は降り続いている。雨宿りできるような場所を探すがどこにもない。ということは、問答無用にこの雨の中を走らなきゃならんわけですな。
仕方ないので走る。そうね、たとえゆっくりでも走っていれば先には進む。とりあえず頑張って走りましょ。なんとか自分を奮い立たせペダルを漕ぐ。しかし、そんななんとか積み上げたわたしの気持ちを打ち砕くように雨が強くなってきた。おまけに風までも。
うわー、マジかよ。稚内の悪夢が一瞬、頭をよぎる。いや、走っていても考えるのはそのことばかり。雨風が強くなるにつれ、頭にこびりついて離れなくなってきた。そうこうしているうちに次第に雨は横殴りに。
あちゃー。とうとうきちゃったかよ。なんとなくそうなるような気はしていたのですが。
雨雲にも強弱があるのか、時折地面を叩きつけるような雨が入れかわり立ちかわりわたしの上を通過していく。おいおい、これってなにかの修行?なんでこんな思いをしなきゃならんの。もうー、嫌。嫌なのです。といってもこの状況が変わるわけじゃない。というか、感情を出せば出すほどかえって精神が疲労していく気が。
そうだ。ここは一旦、感情を殺そう。これが雨だと思うから、辛いんだ。これは単なる水。言うなればシャワーみたいなもん。シャワーなら気持ちいいはず。なんとかそう、自分の頭に刷り込ませる。すると、それが功を奏したのか雨もあまり気にならなくなってきた。おお、作戦成功か、と思ったその瞬間、またもや重量感たっぷりの雨が上から落ちてきた。
いやー、いくらなんでもこんなシャワー、あり得ないでしょ。やっぱ、こりゃ雨。とたんに現実に引き戻されるわたしなのであった。

自分をなだめ、すかし、やっとの思いで襟裳岬に到着したらしい。らしいというのは、霧で周りがまったく見えないから。でも、かろうじて目の前の開けたところに車が停まっているのがわかったので、きっとここは襟裳岬に通じる駐車場だと踏んだのだ。案の定、前に進んでいくと、お土産物屋らしき建物が見えてきた。
雨で体が冷えてしまったのか、オシッコに行きたくなる。外にあったトイレへ向かうと、壁に大学院生さんの自転車が立てかけてあった。
おお、ここにいたんですね。いやー、よかった、よかった。実は、おいてけぼりを食らったんじゃないかと、ちょっと不安になっていたんですよ。
早速、お土産物屋に入って大学院生さんを捜索。おお、いました。いました。いやー、大変な目に遭っちゃったねー。しばらく二人で休憩。大学院生は冷えた体を暖めるためか、ホットの缶コーヒーを飲み始めた。って、今八月だよね。ありえねー、八月にホットを飲むなんて。これってまず内地じゃお目にかかれない光景。変なところで北海道にいることを実感してしまった。
少し落ち着きを取り戻し、二人で襟裳岬の突端の方に行ってみることに。せっかくここまで来たんだから、いくら霧がひどいといっても行かないわけにはいかない。
トイレの脇にある小さなトンネルを抜けると、風をテーマにした「風の館」という施設に出た。その前には無機質のガラス張りの部屋がある。
ん?なんだ、これ?そばにあったパネルを読む。なんでも人工的に風を作り出し、強風体験ができるという風の体験室というものらしい。ふーん、そんなのがあるんだね。あれ?そういえば大学院生さんは?ふと前を見ると、ガラス部屋にズンズン大学院生さんが入っていっている。
あれ?いいんでしょうか?「風の館入場券を持っていないと入れません」と入り口の横の書いてあるんですけど。しかし、大学院生さんは大量の風を浴びながら「これで濡れた服を乾かせますよ」と無邪気にはしゃいでいる。どうやら入り口の注意書きにまったく気づいていない様子。
「おいおい、だめだよ、そんなとこ勝手に入っちゃ」
なんて無粋なことは言いませんでした。だって、すごく楽しそうなんだもん。わたしも見なかったことにして中へ。
うわー、おもしれー。猛烈な風がわたし目掛けて当たってくるため、前に体重をかけても全然倒れない。ひゃー、おもしろいなあ。なんだか童心にかえったよう。結局、そこで十分くらい遊んでしまった。いやー、おかげでだいぶ乾きましたよ。
入館受付の横のらせん階段を上り、屋上に出る。ちょうどそこが展望台になっていた。海側へ歩いていくと、「襟裳岬」と書かれた木看板が立っているのが目に入ってきた。おお、おそらくここからすごい景色が見えるんでしょうね。期待に胸を膨らませ、前に進む。
何も見えませんでした。辺り一面、霧で真っ白なのだ。
あーあ、やっぱり。一応、崖下も覗きこむが、こちらも感心してしまうくらい何も見えない。
あちゃー。もういいです。全然悔しくないです。ここまで霧が出ていると諦めがつくというものです。
すぐ横に岬の突端へ続く小道が出ていたが、こんな霧の中で行ってもなにも見えないだろうと思い行かず。そのまま駐車場へと戻ってきた。
お土産物屋の中に入り、「景色、全然見えなかったよ」とおばちゃんに言うと、「秋は晴れて見えるけど、夏はほとんど毎日霧で見えないわね」決まりきった文句を言うかのように平然と、しかしできるだけわたしを落胆させないかのようにおばちゃんは言った。
ホッ。よかった。それならいいや。だって、「ここ数日は晴れていて景色を見られたんだよ。残念だったね、今日だけ霧が出ていて」なんて言われたらショックじゃないじゃないですか。わたしだけ見れないと思ったら落ち込むじゃないですか。でも、見られなくて当然なんですよね。
いいよ、いいよ、だったらいいよ。こうなったら後しばらくは霧でいいよ。他の人も見られなくていいよ。と、ケツの穴の小さいことを思うわたしなのであった。

よくは見えなかったけど、とりあえず襟裳岬に行ったということでよしとする。さて、今日は寄るところはもうない。これからは宿泊予定地の道の駅まで走るのみ。
それにしても全然前が見えない。霧がものすごーく濃いのである。今まで数々の北海道の霧を体験してきたわたしであるが、もしかしたら今日はナンバーワンかも。だってどこをどう走っているのかまったくわからないんだもん。これってかなり怖い。下り坂だともっと怖い。いつもならウキウキ気分で坂を下っていくのだが、今日ばかりはダメ。まったく先が見えないのでスピードが出せないのである。「いきなりカーブ!」だったら事故にもなりかねない。あーあ、せっかく上ってきたのに下りでスピード出せないなんて。なんだかすごく損した気分。
襟裳岬を後にし、最初に目にしたセイコーマートで昼食休憩。すると、先を行っていたはずのJさんが店の中から出てきた。どうやら追いついたみたいです。
結果、またまたなんとなく三人一緒に走ることに。今日の目的地まで残り五十キロ。
相変わらず体がだるい。途中、またしても眠くなる。国道沿いのバス待合所で仮眠。今のところ、Jさんが先頭、その次に大学院生さん、そして大幅に遅れてわたし。
いや、いいんです。もうのんびり行きますわ。用もないのにコンビニに立ち寄る。あーあ、ほんと走るのが嫌になってきた。
午後四時過ぎ、浦河に到着。ドコモショップがあったので休憩がてら充電。目の前には図書館があった。ナイスです。早速、中に入り、パソコンを借りて明日以降の天気をチェック。明日は生憎の雨模様だが、明後日の金曜日、その次の土曜日はお日様マークが出ている。よし、こうなったら明日中に苫小牧にゴールして、その後すかさず富良野まで輪行し、晴れの金、土曜日に美瑛、旭川を周ってやろう。そう思ったら急に元気が出てきた。おそらく気分転換ができたというのもあるのだろう。これならもっと先の新冠の道の駅まで行けるかも。いや、行ってやるぞ。なーんて行くわけないんですが。

浦河から三十分ほど走り、ようやく今日の宿泊場所である新ひだかの道の駅に到着。いやー、お二人ともお待たせしました。見ると、Jさんはすでに夕食の準備にとりかかっている。おー、早いですね。一方、大学院生さんはどこにも見えず。はて、トイレにでも行ったのだろうか。
それにしても、ここの道の駅は素晴らしい。温泉にコインシャワー(五分で百円)、さらにコインランドリーまである。唯一欠点を挙げるとすれば、周りにコンビニやスーパーがまったくないということ。ここに泊まろうと思っているお方には、途中で買い出ししてくることをおすすめいたします。
まずは、濡れた体をスッキリさせるため道の駅内にあるコインシャワー場へ。
脱衣所で服を脱ぎ、シャワー代金百円を投入すると、シャワー下にある赤色の電光表示板が「5:00」を表示した。続いて、そばにある緑色のボタンを押す。すると、お湯が出始め、それと同時に電光表示板が「4:59」「4:58」と、残り時間を刻み始めた。
わーお。さすがにカラスの行水を自認しているわたしであるが、刻々と目の前で変わっていく時間が突きつけられるとこれは焦る。
お湯で体を軽く洗い流しながら、それと同時にタオルにボディーソープを三滴垂らすやいなや、左手でシャワーをフックにかけつつ、右手でタオルを持ち、頭を一気にゴシゴシ洗い、続いて首、腕、胸、背中、腰、尻、太腿、ふくらはぎ、おっと忘れていた、少し上に戻って大事な部分を洗い、再び下へいき、足首、足の裏を洗い、体についたボディーソープを洗い流しつつ、一緒にタオルも綺麗に洗う。
はーっ。死ぬかと思った。いやね、急いで洗わなきゃいけないと思ってどうやら息止めちゃっていたみたいなのです。
あっ、そうだ。残り時間は?表示板を見る。そこには「1:04」と表示されていた。
ホッ。どうやら間に合ったようです。いやー、それにしてもなかなかスリリングなシャワータイムでありました。
その後、洗濯を済まし、三人で少しお話をしてから、大きな東屋のベンチで揃ってご就寝。外は適度に涼しく、わたし自身とても眠かったこともあり、すぐに深い眠りに落ちていった。

夜中、突然、目が覚める。なにやらポツポツと冷たいものが顔に当たっていたのだ。どうやら風も吹いているよう。
暗闇の中、そっと目を開ける。寝ぼけまなこのせいか、周りの状況がまったく把握できない。じっと息を止めて、もう一度辺りを見渡す。
「うわー、なんだよ、これ!」
目を疑った。なんと強烈な雨風が大きな塊となって東屋の中へ吹き込んでいたのだ。
おいおい、マジかよ。気づくと、Jさんも大学院生さんも目を覚まし、上半身だけ起こし、目をパチクリさせている。しかし、そんな中でも容赦なく雨風がわれわれの体にぶつかってくる。いや、雨風とかじゃない、もう暴風雨のレベル。シャレにならんくらいヤバイ。
「このままじゃ確実に死ぬ」
真っ先にわたしの頭に浮かんだのはその言葉。しかもその文字、恐怖を表すかのようにギザギザな形をしていた。
とりあえず隣の建物に逃げ込もう。ようやく状況を把握した三人は、暴雨風の中、急いで隣の温泉施設の軒下に向かって走り出した。が、風が強すぎて思うように前に進むことが出来ない。ちょっと気を抜けば風に体を持っていかれる。
「うわー、マジかよ!なんだよ、これ」
台風下で猛烈な風を受けてよろけるリポーター。たまにこういった姿をテレビで見かけることがある。
「これもテレビの演出の一つ。さすがにそこまでひどくないだろう。きっと多少は自分で体を傾けているに違いない」
今の今までそう思っていた。
でも、違っていた。
え?なぜかって?だってわたしが今、そのリポーターと同じ状況下にいるんですもん。
あれは演出でもなんでもない。マジな台風の威力を、恐怖を表した渾身のリポートなのだ。
って、そんなことを言っている場合ではない。この状況を早くどうにかしないと。
歩を進めようと必死に足を前に出す。が、無情にも足は宙に浮いたままで、一向に地面に着いてくれようとしない。案の定よろける。それでもなんとか踏ん張り持ちこたえる。まったく前に進まない。全身の力を振り絞り頑張る。すると、一瞬風の勢いが弱まった。
「今しかない!」猛然とダッシュ。
無事、なんとか軒下に逃げ込むことができた。
「いやー、危うく死ぬとこだった。これでなんとか助かったぜ」
なんてことにはならなかった。というのも、この軒下にも雨が吹き込んできていたのだ。
「どうしよう・・・・・・」
唖然、呆然。三人ともただただ立ち尽くすのみ。後の言葉が出てこない。ケータイで時刻を確認すると、夜中の〇時を少し過ぎたところ。夜明けまでは後四時間以上はある。その四時間を雨に濡れながら立ったまま過ごすのか。考えただけで頭がクラクラしてきた。
まったくツイてない。とは思わなかった。いや、そう思う余裕さえなかったのだ。
遠く街灯に映し出された大粒の雨が、轟音とともにまるでカーテンのようにゆらめいている。
しばらくすると、幸運なことに風が弱まり始め、雨も小降りになってきた。おかけで軒下に雨が入ってくることはなくなった。
「今度こそ助かった」
ようやく安堵の表情を浮かべる三人。スロープに寝袋を広げてなんとか寝場所を確保。三人はすぐさまおのおのの寝袋に潜り込み、そのまま泥のように眠った。
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