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北海道一周、自転車で走ったよ!?
2010年夏、苫小牧をスタートしました。さて、結末はいかに? 紀行エッセイです。
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2010年8月3日(火) 変なおじさん (羅臼―開陽台―弟子屈 137km)
朝、寝ていると寝袋をゆすっている人がいた。だれだろう?もしかして、わたしのことを知っている人?でも、こんな所で知り合いなんていないしなあ。あっ、石立おじさんがいたか。でも、あのおじさんはわざわざわたしを起こすとは思えないしなあ。
ちょっと気味悪いなあ、と思いつつそっと目を開け体を起こす。わっ!驚いた。なんとそこにいたのは人ではなく、一羽のカラス!そう人がゆすっていたと思ったのはわたしの勘違い。カラスが寝袋の上に止まっていたのです。北海道に来て二十日近く経つが、寝袋にカラスが止まっていたのはこれが初めて。もしかして死んでいると思われていたのかも。
それにしてもカラスなんて縁起わりぃなあ。美人の女性なら大歓迎なのですが。
寝袋を畳み、道の駅の前にある地図を見に行く。今日は海岸線を外れ開陽台に行く予定。なんでもここは三百六十度水平線が見える素晴らしい場所、北海道に来る前に地元の自転車屋のご主人にそう教えてもらった。それを聞いたら、是非行かねば。
ところで意外と開陽台から摩周湖や屈斜路湖が近いことに気がつく。これ、そんなに距離ないよね?よし、ついでに行ってみる?せっかくだから行ってみるか?実は昨日までは開陽台に行ったらまたすぐ海岸線に戻ってこようと思っていたのです。
よっしゃー、予定変更。ついでに湖も周ったれ!
それにしてもわれながらけっこうな寄り道だよなあ。だって、わたしの目的は北海道一周すること。直接それには関係ないのになんでわざわざ寄るんだろう。一体全体どういう心境の変化なんだろう。
まー、なんかもう終わりが見えてきたんだよね。だいたい、後十日もあれば一周も終わるんじゃない?なんかここまできたらキリのいいところで三千キロは走っておきたい、とか。今帰っても内地は暑いだろうし、とか。そんなに先を急いでも仕方ないし、とか。寄り道するための理由ならいくらでも出てくる。
・・・・・・いや、はっきり言います。実はまだ北海道にいたいんですよ。ようやくここにきて、わたしも旅に慣れてきたのか、旅の良さがわかってきたのか。それはわからんけど、なんかもうちょっと北海道で旅を続けたい、そんな気持ちになったのです。
トイレの洗面台で顔を洗っていると、石立おじさんが現れた。外に出てしばらく話をする。
「ここの川には鮭が上ってくる」
「いっぱい鮭を貰った」
「秋には紅葉を見に来る」
さすが二十回以上も北海道に足を運んでいるだけあって、おじさんの話は尽きることはない。
でもね、一言言いたいことが。
おじさん、話長すぎ。
決して悪い人じゃない。それは間違いないところなんだんだけど、話し出したら終わりが見えないというのが欠点といえば欠点。
わたしが、もうそろそろ行こうかな、と言いかけると、「あそこの漁港はな・・・・・」と次の話が始まる。まったく、もー。

さすがに話を聞いてばかりいるのも嫌になってきたので、おじさんに、摩周湖に行くんだけど近くに野宿できそうな場所とお風呂がないか訊いてみた。すると、「道の駅の裏の公園は泊まるにはいいぞ」「そのすぐ近くに三百円で入れるお風呂があるぞ」というナイスな情報をゲット。
おお、これぞ生きた情報。そこらへんのガイドブックになんて太刀打ちできないでしょう。
ほんと、おじさんを荷台にのっけて一緒に走りたいくらい。で、わかんないことがあったら、訊く。「おじさん、ここらへんにいい寝床ない?」なーんてね。
さて、そろそろ行きますか。石立おじさんに別れを告げ走り出す。おそらくもう一生会うこともないだろう。そう思うと、ちょっと寂しさが募る。
国道三百五十五線を走り出してすぐに霧が現れた。うーん、また出ましたか。しばらく走ると、今度は羅臼峠が見えてきた。峠というからどれほどのものか、ちょっとビビッていたが、意外と大丈夫。ただの坂でした。

午前八時半、標津に到着。開陽台に行くため、ここから右折して国道二百四十四号線に入る。とその前に、飲み物と食料を補給しなくてはならないので、このまま真っ直ぐ四キロ先にあるセイコーマートに行く。そこで食事を済ませ、来た道を引き返す。
おお。目の前に荷物を積んだ一台の自転車を発見。早速スピードを上げ追いつき話しかけてみることに。乗っていたのは東京から来たという大学生。昨日、中標津空港に到着して、今日は羅臼に向かうそう。ちなみに昨晩は一泊五千円の民宿に泊まったそうです。
うん?五千円?五千円ってなに?というか、どのくらいの値段なのかまったくピンとこない。実は、わたし、ここのところずーっと千円以上の買い物なんてしたことないのです。今やわたしの頭の中には三桁の数字までしか存在しない。四桁の数字なんてまったく実感できないんですわ。
大学生と別れ、一路、開陽台へ。ツーリングマップルの通り、まっすぐな道がどこまでも続いている。
自転車で走っている人の中には、進んでいる感覚がないので、こういった道は嫌いという者もいる。でも、わたしはけっこう好きかも(平坦という条件つきですが)。走りに集中できるし、なにせ内地ではこんな道、走りたくても走れないからね。ここぞとばかり飛ばすことに。いやー、実に気持ちいい。
だったのもはじめだけ。途中からえらいアップダウンが始まったのだ。マジかよ、マジかよ、と言いながらがんばる。でも、さすがに開陽台のすぐ手前のあの坂、あれはないでしょー。なんなんですか、あれは。勾配十パーセントをはるかに越える坂がわたしの前に立ちはだかっていたのだ。
とんでもナッシング。こりゃ無理。押すしかないでしょ、と思い自転車を降りて押すことに。ハァ、ハァ、息を切らせ、ようやく開陽台の駐車場に到着。すると目の前には見覚えのある自転車が。おお!そこにいたのは、なんと斜里とウトロで会った大学生。これで三回目のご対面。しばし話をする。またどこかで会うかもね、と言って別れ、展望台へ向かう。階段を登り、屋上へ。
わーお。こりゃ、すごい。見渡す限りの地平線。後ろを見てもずーっと続いている。いやー、こんな景色はじめて見たわ。
しかし、残念ながら空は快晴とまではいかないので、地平線はくっきりとは見えない。でも、いい。それでもいい。これだけの地平線、見ることができただけで充分だ。うーん、やっぱり素晴らしい。来て見てよか
った開陽台。
ここからは摩周湖へ向けて走る。途中、標識に「弟子屈」という地名が。これ、初めて目にしますが、いったいなんて読むんでしょうか。うーん、「でしくつ」しか思いつかない・・・。
ジャーン。正解は「てしかが」でした。
って、わかるわけないっちゅうねん。一発で読めた人、天才でしょう。

午後二時半、その弟子屈入り。役場へ行って摩周湖の周辺道路の状況を訊くことに。道は平坦なのか、坂はあるのか。あるとしたらどの程度のものなのか。前もって知っておけば心構えができるでしょ。だって、いきなり行ってめちゃくちゃキツイ坂でも待っていたら、ショックでかいじゃないですかー。で、どんな感じなんでしょう?
「いやー、はっきり言ってキツイよ」
ええ!そうなの!マジなの?えー、そんな・・・・・・。
いやはや、大変なことになってしまった。ほんの軽い気持ちで寄っただけなのに。昨日の段階では来る予定じゃなかったのに。
来るんじゃなかったかも。止めときゃよかったかも。後悔の念が湧き起こる。
なんでも職員の方の話によると、摩周湖へ行く道は二通りあるという。直接摩周湖へ向かう道と、一旦国道三百九十一号線に出てそこから摩周湖へ向かう道。で、どちらかといえば、前者のほうが坂はキツくないという。まー、あくまでもどちらかといえばなので、どっちにしろキツイことには変わりはないのですが。
うーん、どうしよう。しばし頭を抱える。そんなわたしの姿を見ながら職員の方が言った。
「でも、霧が出たら行っても湖は見えないよ。今日も霧が出ていたので、もしかしたら明日も出るかもしれませんね」
ん?霧?出たら見えない?なんだそりゃ?
あっ、そうか。霧が出れば、摩周湖は見えない。そういうわけなのね。ということは摩周湖に行かなくても済むんだ。キツイキツイ坂を上らなくても済むんだ。「霧の摩周湖」という歌があるくらいだから、霧なんてしょっちゅう出るのだろう。わーい、わーい、明日霧出ないかなあ。そうすれば、「いやー、摩周湖の麓まで行ったんだけどさあ、霧が出てて湖まで行かなかったんだよね。だってどうせ行っても見えないだろうしさ。でへへ」なんて言い訳が立つしさ、自分に対しても、人に対しても。
・・・・・・何を考えてるんだ、わたしは。
せっかくここまで来たというのに霧が出て欲しいと思うなんて。馬鹿か、わたしは。
とはいえ、やっぱりキツイ坂を上りたくないのが本音。摩周湖見たいよりも、苦しい思いをしたくないんだもん、というのが正直なところ。
あーあ、テンション下がったなあ。話を聞くまでは、さっさと今日のうちに行っちゃおう、なんてことも考えていたんだけど。なんかすっかり走る気をなくしてしまった。
あー、もういいや、今日はヤメヤメ。明日朝一番に行こう。
時計を見ると、まだ午後三時。特別することもないので、後はゆっくりすることに。
役場のすぐ目の前に図書館があったので中に入ってみる。スポーツ新聞を発見。ちょっと見てみますか。わーお。さすがは北海道。たいした話題でもないのに日ハムが一面。デイリーの阪神みたいなものか。ついでにパソコンが使えたので、ネットもやってみる。
その後、近くにある道の駅へ。ここ、ちっとも大きくないが、観光案内所の女性がとても気さく。わたしがボーッと立っていたら、「どうしました?何かお探しですか?」と矢継ぎ早に訊いてくる。そこで石立おじさんに教えてもらった公園とお風呂の場所を訊く。すると両方ともすぐ近くにあるとのこと。
早速、教えてもらった公園に行ってみる。おお!すげーぇ。いいじゃん、ここ。なんとそこには大きな東屋が立っていたのだ。ここなら雨の心配はまったくない。しかも外にはベンチが一、二、三、四・・・・・なんと九個もあるではないか。もうどこでも寝ていけ状態。東屋の中に入る。すると、そこにはテーブルとベンチが三組ずつ、デーンと並んでいた。きっとここは大勢で食事を摂るための場所なんだろう。といっても、わたしにとっては寝る場所なんですが。
いやー、素晴らしい。しかも、しかも、ここから自転車で五分のところには、お風呂、コインランドリー、スーパーと生活に必要なものがすべて揃っている。いやー、マジ嬉しい。というか、石立おじさん、ありがとう。あなたは神でした。
しかし一方では、こんなことで喜ぶなんてわたしもずいぶん安上がりな人間になったもんだなあ、という思いも沸き起こってきた。
まー、いっか。それはそれで。せっかくいい気分なのだ。深く考えるのはよそう。
荷物を東屋に置いて、ドコモショップへケータイの充電をしに行く。さっき道路脇にお店があったのが目に入ったのです。
待っている間、日記をつけていると、「暑いでしょ」と女性スタッフの方が缶入りの緑茶をわたしの前に差し出した。しかも冷蔵庫に入れてあったのかキンキンに冷えている。
わーお。なんたる歓待振り。今度は女神が舞い降りてきましたよ。めちゃくちゃ感激。めちゃくちゃ感動。旅に出るとことさら人の気遣いに心動かされてしまうのです。
ドコモショップを後にし、お風呂に入りにいくことに。ここはペンションが経営しているお風呂。今日はそこに入らせてもらいます。

お風呂から上がり、コインランドリーで洗濯し終わると時刻はすでに夜の七時。すっかり日が暮れていた。
急いで公園に戻ると、東屋に一人のおじさんが座っていた。しかもけっこうな音量のラジオと一緒に。
あー、なにすんの。わたしの東屋なのに。なんであなたがここにいるの、せっかく今日はいい気分で寝るつもりだったのに。
と、思ったが、まあ、いいや。いい話し相手になるかもしれんし。そう思い直し近寄る。が、なんか変。よく見ると、おじさんの自転車はママチャリ。しかもテーブルの上にはなぜかたくさんの五百ミリリットルのペットボトルが山積みになっていた。しかも全部空。
ちょっと、ちょっと。これ、意味不明すぎるでしょ。どうみたって普通の旅行者じゃない。もしかしてホームレス?とも思ったが、見た感じ、そうでもなさそう。
うーん、なんなんでしょう、この人は。それにしても参ったなあ、こんな人と今日一緒に泊まるのかよ。さっきまで高かったテンションが一気に下がった。
といっても、わたしが先に見つけた東屋なんだ。こんなことで怯んじゃいけない。よし、こうなったら先制パンチ。ちょっと気合を入れておじさんに話しかける。
「おじさん、今日、ここに泊まるの?」
「いや、夜の一時に出る」
「え!一時!なんでそんな夜中に出発するの?」
「だって夜の方が走りやすいだろ。道の真ん中も走れるし」
なるほどね。そっかぁ。おじさん、いいこと思いついたね。
って、おい、夜でも道の真ん中走っちゃいかんだろ。やっぱり、このおじさん、なんか変。いや、ものすごく変。
話している限り、決して悪い人じゃないと思う。いや、思いたい。うーん、でもなんか自分の世界に入っていて、会話していてもなんかまともじゃない感じが。やっぱりちょっと普通じゃないよね。というか、なんか気味悪い。なんか怖い。こんな人と同じ屋根の下で一夜をともにするなんて怖すぎでしょ。
しゃーない、外のベンチで寝るか。何かあったらでは遅すぎるもんね。って、その何かってなんなんだろう。いや、想像するのも怖いのです。
荷物一式持って、移動開始。そんなわたしに気に留めることもなく、おじさんはラジオを聴きながらビールを飲んでいる。普通、こういう時なんか声かけるよなあ。やっぱ変だわ、このおじさん。
ベンチに寝袋を敷いて横になる。公園には灯りがないため辺りは真っ暗。仕方ないので自転車のライトをつけて、発泡酒を飲む。が、手元を誤り、倒してしまった。寝袋の上をジュワーと音を立てて発泡酒が流れ出ていく。あわわ、あわわ。うー、ショックでかー。だってこの寝袋、今さっき洗ったばっかりなんですよ。もー、なにやってんだ、わたしは。
いい、いい、もういい。忘れてとっと寝よ。残った発泡酒をぐいっと飲み干し、寝袋を体にかけじっと目を瞑る。明日は霧、どうだろう。なんてことを考えていたらいつの間にか意識が遠のいていった。
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