北海道一周、自転車で走ったよ!?
2010年夏、苫小牧をスタートしました。さて、結末はいかに? 紀行エッセイです。
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2010年7月23日(金) ネットカフェではお静かに (余市―札幌 73km)
夜中、寝ていると、顔や寝袋に雨があったっているのに気がつく。しかし、気にせずそのまま寝ていた。
午前三時三十分、ふたたび目が覚める。曇ってはいるが、幸い雨は降っていない。いつものように準備して五時出発。
今日は札幌までの六十キロ弱を走る。ええっ。そんなものでいいの?距離が二桁というだけでえらく楽に感じるようになってしまった。
日常の足としてしか自転車を利用しない人から見れば、それはきっと驚くことなのかもしれない。慣れというものは恐ろしい。
走り出すと思ったよりアップダウンが多いことに気がつく。そう言えば海岸沿いだもんなあ、と思う。余市から小樽へは勾配はゆるいが長い上り。出た、またかよ。北海道特有のダラダラとした長い上り坂。
小樽へ入ると、はい、久しぶりに出ましたよの北海道名物の霧。もう笑っちゃうくらい何も見えません。まったく、テンション下がるわー。でも、霧の中の運河もなかなか情緒があっていいのではないか。そう思っていたら、下がっていたテンションもやや持ち直す。
運河やガラス館、オルゴール館などの前を雰囲気だけ味わって通り過ぎる。小樽も社員旅行で北海道に来た時に寄っていたので特に見たいところはなかったんですよね。
小樽を抜けると徐々に交通量が増えていき、段々と走りにくくなってきた。それにしてもみなさん、飛ばしすぎ。だって、「ここは高速道路か?」そう思うくらい猛スピードで車が通り過ぎていくんだもん。
しかも思っていた以上にアップダウンがある。当然上り坂もあって、これにはけっこう苦戦。
しかし、上りもあれば下りもある。さて、気持ちよく下ろうか、と思ったら、霧が濃くて先がまったく見えない。おまけに勾配がキツイので、スピード出る出る。
「こえー!なんだよ、これー!ふざけんなー!ありえないでしょー!信じらんねーよ!スゲェーな、これ!」
すいません、うるさくて。いやね、叫んでいないと、ホントこわいんですよ。

いよいよ、札幌市街に突入。函館以来の都会ということもあってウキウキした気分、そうなるかと思っていたが、そうでもなかった。ちょっと意外。
車と信号が一段と増え、走りにくくなる。ただでさえ走りにくい道なのに、荷物を積んでいるため余計車に神経を使う。あーあ、なんかイライラしてくるわー。
うーん、なんだか札幌はこのまま通過したい気分。どうしても見たいところがあるわけでもないし。まあ、でもせっかく来たんだし、せめて大通り公園だけでも見ておきますか。どうせたいしたことないと思いますけど。
たいしたこと、ありました。
いやー、なんかいいのです。変に気取っていなくて。いい意味で敷居が低い。こんな?わたしでも気軽に入れそう。なんというかほのぼのとしていいのです。
中に入ってみると、夏休みに入ったせいか平日なのにけっこうな人の数。さすが札幌、観光客が多い。そのせいもあるのか、楽しげな空気が漂ってきます。なんだかいるだけでウキウキしてきます。
とりあえず大通り公園を端から端へと歩いてみることに。
うーん、久しぶりに歩くせいか、歩き方を忘れた。なんて冗談ですが、けっこうしんどいかも。おまけに陽が出てきたので暑い。
ズンズン歩いていくと、突如、ビアガーデンが出現。いったいいくつあるんだろうと思うくらいの椅子とテーブルの数。しかも会場が一箇所だけではなく、いくつも続いている。アサヒ、サッポロ、サントリー、キリン、サントリー、外国産、どうやら各ビール会社のビアガーデンが出店されている模様。おったまげた。全部で一万席くらいはあるのではないだろうか。いや、完全なあてずっぽうですが。
その後、自転車を停めた場所まで戻り、芝生の上にマットを敷いて一休み。うー、なんか落ち着くなあ。こうなったらここで野宿して、今日と明日、ここでのんびりしよっかなあ。
そうそう、今日は近くで花火大会があるそうです。観光案内所のおじさんが言っていました。雨も降らないんじゃないかと言っていたし。よーし、ついでに花火も見ちゃいますか。
なんて思っていたら、雨、降ってきましたよ。おい。午後四時すぎ、サッポロファクトリーに入っているアウトドアショップに行った帰り(蚊帳を探しに行ったのだが、ノース・フェイスにモンベル、どこにも売っておらず。需要、ないんでしょうか)、ジュンク堂書店で立ち読みしていたらポツポツきました。こりゃ、花火大会中止だろうなあ。一気に気持ちが暗くなった。
ヘークッション!しかもなんだか寒いし。なんか札幌にいたくなくなってきたなあ。やっぱり明日出発しようかな。なにかと移り気なわたし。そんな年頃なのでしょうか。でも、そうすると今日中に札幌観光しておかないと。そう考えると、急に焦ってきた。
小雨になったのを見てジュンク堂を出る。まずは赤レンガで有名な北海道庁旧本庁舎へ。
うーん、微妙。建物のデザインはいいといえばいいんだろうけど、それ以上に歴史的価値が重要視されているのではないだろうか。一応、中も一通り見て周るが、ふーん。可もなく不可もなくって感じ。
次は時計台へ向う。やっぱり札幌といえば時計台。ここは欠かせないでしょう。
がっくし。いや、きっとわたしの期待が大きすぎたのでしょう。もっと、こうさわやかさ満載をイメージしていたのですが、実際は、周りを高いビルに囲まれ、横では車がビュンビュン通っていました。しかもけっこうこじんまりとしていて。なんだかなー。
ここでは、多くの観光客がシャッターを切っていた。でも、これって撮る価値あるんでしょうか?だって、よく考えればただの時計台でしょ。まあ、期待して来ておいて言うのもなんですが。
とっくに閉館時間は過ぎていたが、今日はナントカ(失念)ナイトということで夕方から時計台の中が無料解放されていた。でも、そのありがたみもわたしには薄い。だって、別に中を見に来たわけじゃないしー。
なんて言いながら、一応見学。無料と聞いて入らないとなんだか損した気分になるんです。
さんざん文句を垂れましたが、唯一よかったのがライトアップ。下から照らされている時計台は綺麗でした。うん、これはよかった。みなさんも行くなら夜がいいですよ。

さて、後はどこか行くところあったっけ?・・・・・あっ、いけない!大変なことを忘れていた!そうだよ、自転車だよ、自転車!自転車のシフトグリップを直してもらわないと!
慌てて大通り公園脇にある自転車屋へと駆け込む。ありゃ?誰もいない。すいませーん。「はーい」奥から眼鏡をかけた五十代と思しき痩身の男性が出てきた。どうやらこの店の主のよう。
「ちょっと前のギアチェンジが出来なくて・・・」
それを訊いた店主、眼光鋭くすばやくワイヤーケーブルやらなにやらチェック。なんとも頼もしい感じ。正真正銘のプロと見た。しばらくして一言。「フロントディレラーの泥づまりでワイヤーに負担かかっておるわ」
早速、荷物を降ろして、店内に自転車を運び込む。すぐにエアを当てて、泥を弾き飛ばし、ワイヤーを調節。一服しだす店主。え?これで終了?
どうやらわたしの怠慢が原因だったよう。日頃から泥をきちんと落としておけば故障しなくて済んだみたい。
あはは。たしかにそんなところ一度も掃除したことなかったもんなあ。はい、今度からきれいにいたします。自信はありませんが。
さて、これにて終了。と思いきや、なにやら店主、グルグルと後ろタイヤを回している。それ、どんな新しい遊び?と思って見ていると、低い声で店主が言う。
「これ、もしかしたらビート部分、ちゃんとはまっていないかもよ。ほれ、こうやってタイヤを回してみるとボッコンボッコンしているでしょ」
あれれ。すぐに目を凝らし、タイヤを見る。そう言われてみればたしかにタイヤが均等にホイールに収まっていないような。うーん、今までまったく気にしたことありませんでしたけど。というか、そういうものだと思っていました。あはは。
「これ、チューブがビートとホイールの間にはさまっているかもよ」
そう言うやいなや、店主は勢い良く空気を抜いて指をタイヤとホイールの間に入れてクルクル回していく。すると、本来挟まっていけないチューブが三箇所、ビートとホイールの間に見事に挟まっていた。
「ほーら。これで今までよくパンクしなかったねー」
ぎょえー。わたし、この状態で千キロ近く走ってきていますよ。
ツーと背筋に冷たいものが走った。恐ろし。恐ろしすぎますです。そんなこと知っていたら、ガンガン飛ばせなかったですよ。知らぬが仏とは、このことか。
店主にきちんとチューブをタイヤの中に入れてもらう。とりあえずこれで一安心。
その後、ちゃんとした空気の入れ方やツーリング時の荷物の積み方などご教授してもらう。
まさに目から鱗。いかに今まで自分は無知の状態で乗ってきたのか。大事に至らなかったのは単に運がよかっただけなのかもしれない。
なんでも、この店主、北海道大学の自転車部の指導もしているそうです。なるほど。そりゃ説得力あるわ。わたしが札幌まで修理を延ばしたのはこの店主に会うためだったのかもしれない。なにか予感めいたものがあったのかもしれない。
さて、会計の段。いくらだろう。予想で三千円くらいか。わたしには痛い出費だが、こればっかりは致し方ない。できるだけ安いようにと祈りながら料金を訊く。
「じゃあ、三百円で」
・・・・・・え?三百円?ウソでしょ。これで三百円?これだけいろいろなことをしてもらい、アドバイスもしてもらったのに、たったの三百円?一桁間違っているんじゃないの?
「本当だったら、もっともらってもおかしくはないんだけど。でも、いいよ、三百円で」
うわっ、マジですか。いやー、ツイている。とってもツイているとは思うのですが、ここまでツイていると、逆に後で悪いことが起こりそうでちょっとコワイかも。
「三百円じゃあ申し訳ないのでキリのいいところで五百円でどうですか?」と提案してみる。本当は千円で、と言いたいところなんですが、そこまで太っ腹じゃないんですね、わたし。すいませんね、セコくて。
「じゃあ、いいよ。五百円で」
うわっ、いいんですか。五百円でもかなり安いんですけど。いやー、すごい、すごすぎます。
うーん、もしかしたらわたしが旅をしているということで安くしてくれたのかもしれない。なんて心遣いのできる人なんだろう。
なんかすごい人と出会った気がした。世の中にはこういう器が大きい人もいるんだなあ。
何度も何度もお礼を言って、店を出る。外では相変わらずボソボソと雨が降っていた。
自転車を押しながら、札幌駅へと歩き始める。自転車を漕ぐ気になれないのだ。なにか自分の中にあった張り詰めていたものが切れ、力が抜けていく感じ。脱力感みたいなものがわたしの体を満たしている。たとえて言うなら、泳いだ後の、あの脱力感。もしかすると、今まで自分はすごく小さな常識に縛られていたのかもしれない。ふとそんなことを思う。今日はもうなにもやる気が起こらない。ただただ、早く横になりたい、そう願うばかり。
雨の中、暗くなった札幌の街を肩を落として歩くわたしがいた。

今日の宿泊場所は駅前にあるネットカフェ「自遊空間」。ここは数あるネットカフェの中でも値段が安いのが気に入っております。それにしてもネットカフェは函館以来ですなー。札幌に行ったら泊まろうと決めていたのです。それもちょうど雨だしね。よかった、よかった。というか、もう寝れるような場所を探す気力、ナッシングなのです。
人通りの多い道を外れ路地へと入る。自転車を停め、リアキャリアに積んである荷物を降ろす。そうそう、ちゃんと鍵もかけておかないとね。
レンガ壁の細長いビルのエレベーターのボタンを押す。
「ちょっと、ちょっと、みなさん。たくさんの荷物を抱えた怪しい男がエレベーターの中に入っていきますよー」
あっ、それ、わたしのことです。札幌のど真ん中、こんな荷物を持って立っていれば、どうみたって怪しいもんね。ちょっとみなさんの気持ちを代弁して言ってみただけですよ。
エレベーターで受付のある七階へ上がる。フロントでわたしが選んだのは、八時間で千五百円のナイトパック。選んでおいて言うのもなんなんだけど、そうすると朝の三時半には出なきゃいけないんですよね。そんなに早く出れるのかなあ。ちょっと不安。まあ、でも、いつも四時起きだし。少し早く起きれば大丈夫か。
指定した部屋へ行くため階段を下る。そう、わたしの部屋は六階にあるんです。部屋の中へ入る。ううっ、狭い。自遊空間は値段は安いのだが、部屋が狭いのが難点。しかもドリンクの種類も少ないし。でも、しゃーない、安いんだから。そこはガマンなのです。
それにしてもなー。困った。いや、部屋が狭いので、下に荷物を置いてしまうとわたしが横になれるスペースがないのです。あーあ、荷物が多いとこんなことになるのか。まったく予想してなかった。函館でネットカフェに泊まった時は広かったのでまったく気にならなかったのです。さて、どうしよう……。
悩みつつドアの上に目をやる。おお、ここいいじゃん。そこには荷物を置けそうなスペースがあったのである。早速置いてみると、綺麗に納まった。いやー、わらながらナイスアイディア。
さて、くつろぐ前にまずはシャワーを浴びますか。雨で濡れているしね。フロントに行き、シャワー室の鍵をもらう。ちなみにシャワー室は八階にあります。というわけで階段を上る。シャワー室に入り、服を脱ぐ。洗い場へ。わずか五分で終了。あはは。わたしはカラスの行水なのですよ。
部屋に戻って横になる。テレビを見たり、雑誌やスポーツ新聞を読んだり、ネットをやってのんびり過ごす。
気づくと時刻は十二時を回っていた。
うわー、やっべー。あと三時間ちょっとしか眠れないじゃないか。途端に焦るわたし。早く眠らないと。すぐに横になり、じっと目を瞑る。
「どこどこ?」「あっ、ここじゃない?」「あっ、本当だ。ここだよ、ここ!」
突然、わたしの耳に甲高い二人の女の子の声が聞こえてきた。
ちょっとちょっと、うるさいんですけど。
まったく人が眠ろうとしている時に、なんなんだよ、いったい。「ネットカフェではお静かに」っていうことを知らんのか、君たちは。
しかし、そんなわたしの気持ちをよそに、さらに話し声は続いていく。しかもその話し声の主、なんとわたしの隣の部屋に入っていくではないか。ええっ、マジ?ということは、お隣さん?おいおい、勘弁してくれよ。こんなうにるさかったら、眠れやしないじゃないか。
しばらくすると、今度はガタガタと音がし始めた。まったくなにやってんだよー、コイツラは。耳を澄ませて聴いてみると(いや、澄ませなくても十分聞こえてくるんですが)、どうもお互いの部屋を仕切っている壁を外して一つの部屋にしようとしているようなのです。そう、ネットカフェの中にはそういうことができるところがあるのです。
まー、やるのはいいのですが……もっと静かにやってくんない。
「ちょっと、これどうやるの?」「あれ、おかしいね。うまく開かないよ」
なんだかかなり手間取っているよう。
それにしても相変わらず普通の声量で話している。あー、もう、まったく。何やっているんだよ、あんたたち。隣にわたしがいるっていうこと知らないのかよ。
「ぎゃー、もうわかんないよー!」
どうやら知らないみたいです。
もー、まったく。こうなったらアピール作戦。部屋を出て、悪戦苦闘している女の子たちに「仕切り、取れないの?」と声をかけてみた。そう、自分の存在をわかってもらうために声をかけたのです。見ると彼女たち、二十歳前後の若い、というより幼いという言葉の方がしっくりくる女の子、わたしの言葉にちょっと驚いた様子だったが、「はい、取れないんですよ」と答える。起きたついでにドリンクバーへジュースを取りに行く。戻ってきてみると、どうやら仕切り板が取れたらしく、彼女たちは歓声を上げていた。
「よかったじゃん、取れて」
と、心にもないことを言うわたし。チェッ。これでまたおしゃべりが続くよ。ほんと勘弁して欲しいんだけど。というわけで、「おれ、これから寝るんで、静かしてもらえるとありがいんだけどなあ」と牽制してみた。すると「はーい、わかりましたー」と案外、素直な言葉が返ってきた。
ん?本当にわかったのかよ?なんだがおバカそうな返事が気になりますが。
まあ、いいや、これでゆっくり眠れるぞ。さすがにここまで言えば、静かにしてくれるだろう。
十分と持ちませんでした。
ピーチク、パーチク。うるさいのです。
まったくここは喫茶店か。おまえらの家か。こういう場所では静かにするという教育を受けてこなかったのか。
まあ、受けてこなかったんでしょうね。だから平気で話していられるんでしょうけど。
もういい。わたしの負けでいい。そういうことでいい。ガマンします。泣き寝入りします。
彼女たちの声をかき消すためにパソコンのボリュームを上げて音楽を聴く。少し、ヘッドフォンから音が漏れているようだが、かまうもんか。どうせ隣は話に夢中で聞こえやしないんだから。
あっ、そうだ。そういえば、今日、明日の天気ってどうなんだろう?一応チェックしておかないと。
早速、ヤフーの天気情報、札幌版を見る。
ガーン。今日と明日、しっかり傘マークであった。おいおい、マジかよ。こんなとこで無駄に二日も足止めかよ。勘弁してくれよ。
でも、雨だとすると、泊まるところどうしよう。というか、雨の中、寝る場所探したくないという話なんですが。でもまたネットカフェに泊まると金かかるしなあ。いやー、参った。
ケータイを見ると、すでに一時半。おいおい、今から寝ても二時間しか眠れないじゃんかよ。まったくもー。
急いで横になり目を瞑る。ヘッドフォンから流れてくる音楽に集中していると、あっという間に意識が遠のいていった。
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