北海道一周、自転車で走ったよ!?
2010年夏、苫小牧をスタートしました。さて、結末はいかに? 紀行エッセイです。
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2010年7月31日(土) 金丸くん登場 (網走―ウトロ 117km)
午前四時。最近はほとんどこの時間に目が覚める。体内時計が反応しているのか。
寝袋から顔を出す。外を見ると思いっきりの霧だった。あちゃー。久々のご対面。
今日は知床の玄関口ウトロまで。八十キロちょいなので余裕のペース。
でも、今日は週末の土曜日なんだよね。人が多くいないかちょっと心配。いや、あんまり多いとゆっくり観光できないのではないかと思ってね。
それにしてもなぜか土曜日は観光地に当たる。先週は札幌だし、その前は函館、で今日は知床でしょ。これは単なる偶然だろうか。それとも何か意味があるのだろうか。とすると来週は釧路かも。
昨日洗えなかった寝袋を洗うために駅前のコインランドリーへ。洗濯している間、日記を書いたり、朝食を済ますことに。
今日は朝から豪勢にすき家の牛丼でいく。まあ、たまにはいいでしょう。ここは奮発して大盛り。といきたいところだか、そこは節約して並盛りで我慢。会計を済ませようとすると、二百五十円になります、と言われた。
あれ?たしか、並盛りって二百八十円じゃなかったっけ?店員に訊く。なんでも今の期間だけ二百五十円だそうです。おお、ラッキーじゃん。なんだか得した気分。
コインランドリーに戻ると、ちょうど乾燥が終わったところだった。でも、よく乾いておらず。え?なんで?仕方ないのでもう十分追加する。が、それが終わっても、まだよく乾いていない。おいおい、なんでだよー。合計三十分もかけて乾かないって。前は二十分でも充分乾いたんだよ。この乾燥機、性能が悪いのか。
仕方ないのでまた乾燥スタート。十分経過してようやく終了。と思いきや、まだ湿っぽい。あーん、マジかよ。
もういいや、これで。これ以上、お金も時間もかけたくないのでよしとする。・
思ったより乾燥に時間がかかったため、いつもより大幅に遅れ、六時四十分に出発。
さて、遅れを取り戻すべく気合を入れて走りますか。しかし、濃い霧のため前がまったく見えず。自転車でもちょっと怖いくらいだから、スピードの出る車ならなおさらだろう。運転している人は怖くないのだろうか。それとも慣れっこになって気にならないのか。
途中、たくさんの野生の花が咲いているという小清水原生花園の横を通ったらしい。らしいというのは、霧でまったく見えなかったからである。今度は損した気分。

国道を逸れて斜里の道の駅と向かう。最近はできるだけ道の駅へ寄るようにしている。せっかく来たんだから寄っておこうという考え。しかも、ここの道の駅ではインターネットができるらしい。これは寄らない手はないでしょう。久しぶりに文明の利器に触れたいと思います。
それにしても斜里は真っ直ぐな道が多い。前を見ても、ひたすら直線道路。あまりにも長いし、路肩も広いし、全然車も通らないので、試しに顔を下を向けて走ってみることに。
ひゃー、面白い。全速力で漕いでも全然無問題。こんなの内地じゃありえません。
そうこうしているうちに道の駅に到着。着いてすぐに、明らかに旅仕様の自転車を発見。すぐそばに持ち主らしき青年がいたので話を訊いてみることに。
わーお。驚いた。なんとこの青年、日本一周しているそうなのです。しかもこの日本一周、普通の日本一周とはわけが違う。だいたい自転車で日本一周といったら、ぐるっと海岸線を周って、はい、終わり、となるのだが、この青年は海岸線だけでなく、気になる場所があったら、聞いたことのないような町や村でも、山の中でもどんどん行くそうです。この先はどうなっているんだろうという好奇心のおもむくままに。
うーん、すごい。というか、わたしにはとても考えられない。わたしが行くところといえば、ガイドブックに載っているようなところばかり。正直、彼みたいにそんな何もないようなところへ行ってどうするんだろうと思ってしまう。時間の無駄だとさえ思ってしまう。
彼は日本一周を終えると、イタリアへ料理留学するそうです。それまでに日本のいたるところを周って、食に関するところをいろいろ見てみたい、と言う。なるほどね、この青年は料理人なんですね。
普通、こういう旅ってなるべく荷物を軽くしようとするのだが、彼の場合、たくさんの調味料を持ち歩き、余った食材も運んでいる(後で彼のブログを読んで納得したのが、これらは彼にとって余計なものでもなんでもなく必要なもの。驚いたのはオーブンや、蜂の巣箱まで持っていこうとしたこと。さすがにそれは重いので諦めたそうですが)。なんだかわたしにはそれがすごく面白く感じられた。
それにしても、彼の話を聞いたり、ブログを読んでいると、これが実に楽しそう。毎日、美味しそうな料理を作ったり(料理人なのでお手のもの)、途中で知り合った人と遊んだり、図書館でDVDを見たり。そうかと思えば、農家やレストランで食の勉強をしたり。彼の場合、自転車で旅をしているというより、日本一周という形を借りて自分のやりたいことをやり、見たいことを見、行きたいところに行っている、そんな感じがする。
おそらく走っている距離はわたしの方が多いだろう。でも、中身に関して言えば、その充実度には雲泥の差がある。はるかに彼の方が濃い。
わたしにとってこの出会いは、自分の旅についてとても考えさせられることとなった。後から思えば、ある意味ターニングポイントになったと言えるかもしれない。
別れ際、名刺をもらった。そこには「金丸ともひろ」と書かれてあった。気になった方、是非ネットで検索してみてください。日本一周のブログやってます。

斜里の道の駅を後にし、いよいよ知床に向かう。まずはオシンコシンの滝へ。正直、さほど期待はしていない。滝といったって、今までわたしが北海道で見た滝よりもちょっとすごいだけだろうと。
わたくし間違っておりました。すごくいいのです。素晴らしくいいのです。ふつう滝といったら、こう、まっすぐ垂直に近い形で水が落ちていくものだが、これは違う。なんと斜めに落ちていくのである。どっひゃー。こんな滝見たことない。しかも、この時間になると空も晴れわたり、山の緑、滝の白、そして空の青、それが力強いコントラストを描いている。それがなにか一層わたしに素晴らしいものと感じさせてくれた。ただただ感動するばかり。いやー、高揚感煽られるわ。
あまりにもテンションが上がっていたせいか、気づいたらそばにいた観光客相手の写真屋さんに話しかけていた。その方としばし談笑。別れ際、自転車で知床五湖まで行けるかどうか訊いてみた。
「大丈夫です。駐車場があるからそこまでだったら自転車でも行けますよ」明日は天気がよくないらしいので、今日行った方がいいかもしれませんね、と言う。
よっしゃー。こうなった今日、知床五湖に行ったろうか。時間もまだあるし、距離もそんなにないし。
おりゃー、わたしは自転車に飛び乗り走りだした。
「ありがとうございまーす!」
大きな声で写真屋さんにお礼を言い、自転車のスピードを上げた。
しかし、ここからが大変だった。
ウトロの道の駅を過ぎ、視線を上げると、えらい高い場所に車が走っているのが目に入ってきた。ここから見るとそれはまるでループ橋のよう。
うっそーん。マジで?マジであんなところを上るの?とたんにさっきまでの気合が消えていく。まあ、でも上らなきゃ行けないわけでしょ。だったら行くしかないでしょ。覚悟を決めて上り始める。思ったよりきつくはない。が、しばらくすると、脚に疲労が溜まってくるのを感じ始める。しかも、またこういう時に限って天気がいいんだよねぇ(泣)。
汗がポタポタ落ちてくる。。ハァ、ハァ。息が切れる。もう少しか?と思い、最後の力を振り絞りなんとか上り切る。そこから少し行き、知床自然センターに到着。
できれば天気のいい今日中に、知床五湖と滝壺に温泉が湧いているというカムイワッカ湯の滝を回りたい。
それってできますかね?職員に訊くと、どちらもシャトルバスで行けるが、今から両方周るとなると滞在時間がわずかしかとれないとのこと。
どっひゃーん。うそでしょ。せっかく必死こいて一生懸命上ってきたのに。それはひどすぎますよ。
うーん、どうしましょ。両方回るのがダメなら、どっちか一つに絞るしかないってことか。それとも、今日は諦めて明日両方回るか。でも、明日は天気が悪いらしいしなあ。
・・・・・・まあ、カムイワッカは単なる滝でしょ。それなら天気がよくなくてもあんまり関係ないんじゃないか。それに比べて知床五湖は周りの景色によっても見る印象もだいぶ変わってくるだろう。
やっぱり天気のいい今日、知床五湖に行きたい。というわけで、カムイワッカは明日に回し、今日は知床五湖一本に絞ることにした。
ちなみに知床五湖までどのくらいありますか?
「ここからだと約九キロです。・・・え?自転車?自転車で行くならアップダウンがあるのでかなりキツイですよ」
いやいや、キツイっていっても、わたしだってそれなりに北海道走ってきてるんですよ。そこそこのアップダウンじゃあ驚かないですよ。まあ、大丈夫でしょ。
大丈夫じゃありませんでした。
いや、それでもはじめはよかった。ずーっと急な下りで(しかし、帰りはこれを上ってくるのかと思うと憂鬱だったが。こんなに急じゃなくていいのですよ)。でも、途中目にしたバス停辺りから雲行きが怪しくなり始めた。ついにアップダウンが始まったのだ。
職員の言葉に嘘偽りはなかった。これがキツイのなんのって。急な上りが終わって下ったら、また急な上り。で、それを下るとまた急な上り。以下、その繰り返し。中には十パーセント以上の勾配のところもあったりして。これってほとんど拷問。相変わらず太陽は容赦なく照り付けてくる。もー、暑くて仕方ない。しっ、死ぬー。
あー、大後悔。大失敗。おとなしく冷房の効いたバスでくりゃよかったよ。もう、お金ケチって自転車でくるもんだから。自分の愚かさを呪いましたよ。しかし、あそこの職員も職員だよなあ。絶対無理だから行かない方がいいって、なんで止めてくれなかったんだろう。まったく気が利かないったらありゃしない。とうとう職員に八つ当たりまでする始末。
なんとか頑張って漕いでいくが、徐々に太腿に疲労を感じ始める。ついにはまともに足が上がらなくなってきた。結局、知床五湖まで後、残り三百メートルのところで力尽きた。悔しいですが、自転車を降りて押すことに。もうだめ。限界でした。
着いてみると、すでに夕方であるにも関わらず、駐車場にはたくさんのマイカーと観光バスが並んでいた。自転車は・・・どうやらわたしだけのようです。そうだよなあ、あんなところを走ろうなんてよっぽどの物好きしかいないでしょ。
さて、あまりゆっくりしている暇もないのでとっとと回りますかね。とりあえず、みなさんが行く後ろへついていく。途中、ガイドさんが引率している団体がいたので、ぴったりマーク。どさくさに紛れて説明を聞こうという腹積もりなのです。が、ガイドさんに「先に行ってください」と言われてしまう。え?なんで?なんでわかったの?
チェッ。おれ一人くらいいいじゃねえか。ケチくさい。
知床五湖はその名の通り、五つの湖がある。しかし、現在は熊が出るということで一湖と二湖しか見れない。まあ、いずれにしろ五湖も周る時間がないので、どっちでもいいんですけど。
一湖と二湖、それぞれの見晴らし所に行く。どちらもよかったが、とくに二湖がよかった。木々の間から湖が見え、しかも湖面には後ろに広がる山々が映っている。それが息を呑むほどの素晴らしい景色だったのだ。
あれ?そういえばこの景色、どこかで見たことあるなあ。・・・・・・そうだ、思い出した。ヨセミテだ!
十年前に、アメリカの大自然を見たくて中西部の国立公園を回ったことがある。その時行ったヨセミテ。そこで見た景色と似ていたのだ。ちなみにヨセミテは、アメリカ人に一番人気のある国立公園。うん、たしかによかったなあ。もう一回行ってみたいなあ。果たしてわが人生で再び訪れることはあるのだろうか。
それにしても、こんな景色、晴れの時じゃないと見れないでしょ。やっぱり今日来て大正解。
駐車場に戻ると、今度は湖とは逆の方向に人が流れ出ていた。立ち止まってじっと見てみる。すると、その先には高架木道が走り、そこを多くの人が歩いていた。
あちゃー。まだ見るところがあったのか。でも、時間が気になる。が、後で、「あそこよかったよねー」と言われるのが悔しいので行くことに。みなさんは車でしょうが、わたしは自転車なのです。
いやー、でも、無理して行ってみるものです。晴れた空をバックに知床連山やオホーツク海が一望。これが実に雄大な眺めなのです。しかも、木道は曲がりくねっているため、いろんな角度からそれらを楽しむことができる。これぞ大自然!もう素晴らしいの一言。個人的には五湖よりいいかも。充分堪能いたしました。
時刻はまもなく午後五時。すでに日が傾きはじめている。さすがに焦る。帰りはさっき下ってきた坂を上らなきゃいけないのだ。
いったいどのくらいで戻れるのか、皆目見当がつかない。ちなみに来るときは四十分ほどかかった。
とりあえず一生懸命走るしかない。ちんたら走っても時間が過ぎるだけだ。幸い、自転車に乗っていなかったため体力は回復している。案の定、アップダウンはすんなりクリア。あとは知床自然センターまでの上り。もう、キツくなったら素直に降りて押します。行きに降りちゃっているので、一回降りようが百回降りようが変わらないでしょ。その開き直りが功を奏したのか、帰りはわずか二十五分で戻ってきた。

再びウトロの街中へ。さて今日はどこに泊まろうか。とりあえず、来る時寄った道の駅へ行ってみますかね。
しばらく走り、道の駅に到着。うーん、今日はここでいいかなあ。ベンチの上に長い庇もあることだし。これなら雨が降っても濡れる心配はない。
飲み物が切れたので、スーパーを探しに行く。コンビニならすぐ目の前にあるのだが、そこじゃ買いたくない。定価で買うなんて馬鹿らしい。
ちょうどうまい具合に駐在所があったので、そこで訊くと、肝心のスーパーはすぐ近くにあった。
用が済んだので、さあ、行こうか、と思ったら、なぜかお巡りさんは話を続けてくる。よっぽど話好きなのか。いや、単に暇なのかも。
「そこのセブンイレブン、北海道で一番売り上げがあるんですよ」
へー、そうなんだあ。札幌が一番だと思ってた。
「そうそう、セイコーマートは他のコンビニよりも安いよ。ジュースも安いんじゃないかな」
へー、そうなんですか。そういえばセイコーマートで飲み物を買ったことなかったなあ。コンビニということで勝手に高いと思い込んでいたのである。それなら一度見てみることにしよう。
ちなみにセイコーマートというのは北海道産のコンビニ。いや、正確に言うと、コンビニとスーパーを足して二で割ったようなお店。走っているとしょっちゅう見かけます。
「ここは熊がよく出るんですよ。以前、道路に出てきた熊と観光バスがぶつかってバスが横転したことがあるんですよ」
え?まじ?熊ってすごいんだな。そんな力あるんだぁ。
「そうそう、安いお風呂なら、あの坂上った所に夕陽の家っていうところがあるから」
あっ、そうなんですか。じゃあ、これから行ってみます。
「泊まるのなら、あそこにバスの駐車場があるからそこがいいんじゃないかな。トイレも近くにあるし」
いや、泊まるとこならもう決めてあるので大丈夫ですよ。
お巡りさんなのか、ガイドさんなのか。途中からよく分からなくなってきた。というか、ここは駐在所兼観光案内所なのか?まあ、いろいろな話が聞けて面白かったからいいんですけど。
お巡りさんから教えてもらったお風呂へ行く。しかし、営業時間が午後八時まで。うわっ、あと一時間もないじゃん。せっかく休憩所でゆっくりしようと思っていたのにー。というわけで、いつもよりさらに輪をかけてのカラスの行水。閉まるまで日記をつけたりしてくつろがせて頂いた。あっ、あとケータイの充電も。
道の駅に戻りさっさと寝ることに。が、またしても虫が刺してくるため、なかなか寝付けない。ほんと勘弁してくれよ。とりあえず明日はカムイワッカに行く予定。でも、雨らしいしなあ。どうしましょ。
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2010年7月30日(金) 網走刑務所の近くに泊まる (湧別―網走 114km)
いつも通り午前四時起床。雨に濡れないようにと中に入れておいた自転車を外に出す。
わー、きったねー。さすがに昨日はずっと雨の中を走っていたせいで、自転車の至るところに泥がはねている。うーん、なんか気分よくないね、このまま走るのも。
天気はどうかな、と空を見上げてみる。雲は出ているが、ところどころ青空が顔を覗かせていた。
えーと、こんなに晴れたのは四日振り、ですか。
はぁーっと大きく息を吸い込む。うーん、空気がおいしい。気持ちがいい。さあって、気分がよくなったところで自転車をきれいにしますか。
と思ったら泥を落とすための水がない。
あっ、そっか、そっか、あった。というか、そこしかないでしょ、トイレの洗面台の水。と、思いついたまではよかったが、今度はその水を運ぶための入れ物がない。そこらへんにバケツやコップ、落ちているわけないよね。仕方ない、両手をコップ代わりにして水を運びますか。あちゃー。半分以上こぼれたやないかい。十回以上往復してようやくきれいになった。
今日は最低でも網走まで行きたいところ。百キロはないので、普通に走れば行ける距離。
走り出してしばらくすると、サロマ湖が見えてきた。朝日にキラキラ輝く湖面。実に美しい。何か神々しさを感じさせてくれる。ところで、このサロマ湖、全国で第三位の面積を誇るそう。
へー、そうなんですか。それは知りませんでしたな。一位、二位は知っていたが(もちろん、琵琶湖、霞ヶ浦)、三位が北海道にあったとは。ちょっと意外。
途中、サロマ湖のビュー・ポイントであるピラオロ展望台に寄る。が、はっきり言ってたいしたことがなかった。というか、湖が大きすぎて目に入るのが水ばっかりなんですよ。景色として楽しむのにはもっと小さい湖の方がいいんでしょうね。
この近くにはもう一つ展望台があるらしい。しかもそこはここより見晴らしがいいそう。よし、行こうか。と思ったが、五キロも山の中へ走らなければならないと知ってやめた。
だってぇ、坂上るの嫌だしー。それにせっかくの晴れ。なんか今はもっと先を走りたい気分なんだもん。
それにしても久しぶりの青空。走っていて実に気持ちがいい。繰り返し現れるアップダウンも苦にならない。とはいえ、思いっきり太陽が出ると、やっぱり暑い。喉が渇く。うーん、夏ですな。
湖周の公園線に差し掛かる。いやー、ここ、いいです。湖がよく見えます。気持ちのいい道です。よし、ここは走りを堪能しよう。そう思い、自転車を漕ぐことに専念。
が、あまりに専念しすぎたせいか、途中寄ろうと思っていた「サロマ湖ワッカネイチャーセンター」へ入る道を見落としてしまった。
あっちゃー。どうしましょ。まー、いっか。戻るのも面倒くさいしね。
そのまましばらく行く。すると、自転車に乗った小学生らしき男の子がわたしの前を行くのが目に入ってきた。よく見ると野球のユニフォームを着ている。これから野球の練習にでも行くのだろうか。
それにしても、この少年、後ろから走ってくるわたしのことが気になるのか、さかんに後ろを振り返る。いつの間にかわたしが少年を煽っている形に。いや、そんなつもりはまったくないのですが。
でも、ちょっと面白い。本当に煽ってみようかと思い、試しにスピードを上げてみた。すると、少年の振り返る回数が徐々に増えてきた。オラオラ、ウリウリ。あはは。けっこう楽しいですな。

サロマ湖を過ぎ、旧常呂町に入る。常呂といえば、なにはなくともカーリング。本橋マリリン、いないのでしょうか。探してみましたがいませんでしたな。
ところで、ちびちび飲んでいた飲み物がとうとう切れました。
うへっ。こんな暑いのに飲み物がないなんて、熱中症がちょっと心配。こりゃ、まずいと思い、スーパーを探す。サッポロやツルヤ、どこかにないの?
しばらく走ると、一軒のスーパーが目に飛び込んできた。ほっ。助かった。が、近くに寄ってみるとまだ開店前なのか、店内の照明は落ちたまま。自転車を降り、近寄る。自動ドアを見ると、「九時開店」の文字が。ちなみに現在の時刻は八時四十分。
うわっ、マジですかー。
はーっ。あと二十分かぁ。今はこの二十分が死ぬほど長い。
待てねー。喉渇いたよー。なんか飲みたいよー。心の中で駄々をこねる。
といっても状況は変わるわけでもない。うーん、どうしよう。でも、二十分も待てねぇしなあ。
なんてことを考えていると、暗い店内から一人の店員が出てきて、窓を拭き始めた。なんだか片桐はいりを十歳ほど若くした感じの女性。
「まだ開店しないですよね?飲み物買いたいなあなんて思ったりして」わたしの笑顔の引き出しの中にあるとびっきりの愛想笑いを出して訊いてみた。
すると、それが功を奏したのかわからないが、「あー、飲み物ですか。だったらいいですよ」なんとドアを開けて店の中に入れてくれた。
うわっ、マジ?よっしゃー。心の中でガッツポーズ。言ってはみるものである。
それにしてもなんて優しい人。片桐はいりなんて失礼なことを言ってすいません。あなたは天使です。あっ、でも、そうすると片桐はいりに失礼になるか。あー、つまり、どっちもゴメンナサイ。
レジで会計を済ませながら、片桐はいり、いや間違えた、天使さんに話しかけてみる。
「どうもありがとうございました。おかげで助かりました。それにしても最近ずっと雨が降って、自転車で走っていても大変なんですよ」
「でも、今日は逆に天気がいいからさあ、喉が渇くかもしれませんねぇ」
ズッコケた。バリバリの北海道訛りだったのである。うーん、でも文字じゃ伝わらんか、このイントネーションは。
それはともかく、なるほど。そうかもね。もう、こんな思いはしたくない。ついでにもう一本買っておくか。と思ったが、荷物になるのでやめておいた。

「オホーツク自転車道」の標識が現れる。おお、もしかして北海道で初めての自転車道じゃない?よーし、久しぶりに車を気にしなくて気持ちよく走れるぞ。
と、思ったのも最初だけ。はっきり言って、ここの自転車道イマイチ。道は狭いし、路面状況もお世辞にもよいとは言えない。
国道の方が走りやすいかも、と思い、すぐに国道に戻る。実際走ってみると、国道の方が走りやすかった。あはは。意外とそんなもんです。
国道を逸れて、能取岬へ通じる道へ。その途中、一匹の動物が道路の真ん中で顔だけこちらに向けて立っていた。
ん?なんだ?しばしじっと目を凝らす。
もしや・・・・・・もしや、キタキツネ?・・・そうだ、そうだよ!やっぱりキタキツネだ!うわー、マジで。
いやー、驚いた。まさか本物のキタキツネを見れるとは。じんわり感動。涙がちょちょ切れそう。嬉しさのあまり泣いちゃうかも。
「こんにちは。よろしくね」
キタキツネに向かって手を振る。しかし、キタキツネちゃん、そんなわたしの気持ちもおかまいなしにさっさと林の中に去っていった。
おーい!待ってくれよー。後ろから声で追いかけるも彼(彼女か?)には届かず。
あーあ。行っちゃった。残念。もうちょっと見ていたかったのにー。
しばらく走っていると、前からキャンピングカーがやってきた。なにやらライトでパッシング。もしかして、これ、わたしに挨拶してるわけ?わーお。こんなの初めて。嬉しさのあまり、ドライバーに向かって大きく手を振る。すると、なぜか大笑いしながら手を振り返してくれた。あれ?いったい何がウケたのでしょう?
しばらく行くと今度はオートバイがやってきた。こちらもわたしに向かって手を振ってくれる。お返しにとばかり、これ以上ないというくらい大きく手を振ってみる。すると、こちらもなぜか大笑い。え?何がツボなんでしょう?
でも、楽しいー。なんかすげぇ、楽しいー。人を笑わせるのってこんなに楽しいものだったのか。なんだかクセになりそう。
ようやく能取岬に到着。と思いきや、なぜか砂利道の細い道が続いていく。どうしたんでしょう?行けども行けども岬らしいところに出ませんけど・・・・・。あはは。どうやら道、間違えたようです。
来た道を引き返し、今度こそ能取岬に到着。
だだ広い原っぱにたくさんの牛や馬が放牧されている。おお!すげー!こんなにたくさんの生牛、生馬はじめて見たぜ、というくらい実に圧巻の眺め。
試しにどのくらいいるのか数えてみた。一、二、三、四、・・・・・なんとまあ、百頭以上いるではないかーい。
それにしても面白い。わたしの目の前にいる牛、おまえ、いつまで食べているんかい、と思うくらい黙々と草を食べているのである。ほんと飽きないでよく食べれるよなあ。と言いつつ、それを見ているわたしもちっとも飽きないんだから人のこと、いや牛のことは言えないのである。
更に面白かったのが、近くに落ちている牛のウ○コのすぐそばでも平気で草を食んでいたこと。これ、人間にたとえれば、トイレでウ○コをした後、流さないでご飯を食べるようなもんでしょ。さすが動物、人間と違って実に逞しい。妙なところで感心。
岬の先端へ向かう。細く長い小道をてくてく歩き断崖の手前に到着。上から身を乗り出してはるか下に広がる海を覗く。
うわー、すげー汚れているじゃん。なんだよ、これ。なんかこう、もっときれいな海を想像していたのだが。と思いつつ、しばらくマジマジ見ていると、自分の間違いに気がついた。いや、汚れているなあと思って見ていたのは、実は海の底。つまり、海の底が見えるほど、ここの海は透き通っているのですよ。どっひゃーん、そうだったのか。それにしても、ここまで海底が見えるとは。よっぽど透明度が高いんですね。

午後一時半、網走入り。まずすることといえば、自転車屋を探すこと。いや、実は札幌で修理してもらったシフトグリップ、あれがまた壊れてしまったのですよ。それと、ここ数日の雨で、チェーンが油切れおこしてギコギコうるさいのです。ついでに油も借りようかなあと思ってね。
早速、市役所で教えてもらった自転車屋へ。すいませーん、油貸してくださーい。
すると、なんだい、といった顔で店主が奥から出てきた。
「油切れかい。まー、いいけど」と言うわりにはあまり貸したくないご様子。どうやらわたくし、歓迎されてないみたいです。
店主から油の入った小さな容器を受け取る。少しずつペダルを回しながら、油をチェーンに垂らしていく。おおー、いい感じ。ペダルをくるくる回転させると、実になめらかーな具合にヘーンシン。続いてシフトグリップの調子を診てもらう。
「あー、こりゃ、ラバー部分とプラスティック部分を接着させないとダメだね」
うーん、そうなんですか。というか、そうすれば直るってことなんですかね?
「・・・・・・多分。ま、ウチはこういうのはやったことないけどね」こんな修理やりたくねぇな、という顔で実に気だるさそうに言う。
ムカーッ。なんかその言葉を聞いたら、その様子を見たら、腹が立ってきた。ここで直すのが馬鹿馬鹿しくなってきた。だって、こっちはお客なんだよ。お金を出すんだよ。なのに、なんでこんなやりたくなさそうなところに頼まなきゃいかんのよ。「はい、喜んでやらさせていただきます!」と言ってやるのが、店側の流儀なんじゃないの?
あーあ、アホくさ。あまりにもアホくさくなったので、ここの近くに他に自転車屋はないですか、と訊いてやった。すると、このすぐ近くにもう一軒あるという。オッケー、オッケー。そこ行こ、そこ。
教えてもらった別の自転車屋へ。早速、シフトグリップの故障を診てもらう。
すると、「あー、これはグリップごと交換しなきゃだめだねえ」という答えが返ってきた。
あれ?さっきの自転車屋と言ってること違うんですけど。どっちが本当なの?
うーん、本当に交換しなきゃいかんのかどうなのか。不安。しかも、グリップ代が五千円、それにプラスして技術料がかかるという。
たけー。たけーよ。あーあ、そんなにかかるんならやめておくか。それに店主を見ると「やりたくないよ」と顔に書いてあるし。というよりなにより、また途中で故障したら、旅先じゃあ文句も言えないじゃん。まさかまた直してもらうためにわざわざ網走まで戻ってくるわけにもいかないし。
とまあ、なぜ、わたしがそこまで考えるのか。
札幌で完璧に直ったと思っていたというのに、結局は直っていなかった。それがちょっとトラウマになっているのです。
たくさんのところを直してもらい、いろいろなことを教わった。しかもとても安い料金で。その店主の器の大きさにいたくわたしは感動した。あれはいったいなんだったんだろうか。返してくれよ、感動。
まあ、いいや。決定。この自転車は今から八段変速と相成りました。北海道走り終わるまでこれでいこうと思います。まー、今までもこれで走っていたので、問題はないでしょう。

さて、現在、午後二時過ぎ。うーん、なにか先を急ぎたいところ・・・・・。でも、やっぱり網走といったら刑務所だよね。さすがにそこをスルーすると後悔しそうな気が。
まー、行くか。せっかく網走に来て刑務所に行かなかったら、なんかもったいない気もするし。
というわけで、まずは本物の網走刑務所へ行くことに。おお、驚いた。いやー、刑務所というから、さぞかし人里離れた寂しい場所にあるのかと思っていたのだが、実際は、車がビュンビュン飛ばしている国道のすぐ近くにあった。更に驚いたのは、すぐそばには団地があり、人々がごく普通に日常生活を営んでいることだった。
おいおい、大丈夫なのか。極悪犯が脱走して住民を襲わないのか?人質にとって身代金を要求しないのか?
人事ながらものすごーく心配。
以下は後でわかったことである。なんでも網走刑務所は昔はともかく、現在はそれほど重い罪の受刑者は服役していないそう。もちろん近年、脱走事件も起こっていない。
あはは。どうやらわたし、テレビや映画の見過ぎのようです。
次に訪れたのは、昔の網走刑務所を再現した「博物館網走監獄」。
入場券を買うため列に加わる。しばらくそのまま並んでいると、わたしの前にいた若い女性が振り返り、「これ、持っていますか?」と一枚の紙を出してきた。見ると、それは団体割引券。女性の前にはおばあちゃんと弟らしき人も一緒。
はい?なんですか、それ?もちろん、そんなもの持っているわけありません。だって一人で来ているわけだし。
わたしが訝しげにしていると、その女性は、「よかったら、一緒にチケット買いませんか?」と申し出てきた。
え?ウソ?いいの?マジで?これ、使うと割引になるんでしょ。もちろん買います。買いますよ。異論、あるわけないじゃないですか。
結局、四人で入るということにして、団体割引にしてもらった。おかげで千五十円(高い。本当にそんなが価値あるのか)のところが九百四十円になった。でもなぜ誘ってくれたのかは謎。
お嬢さんに深く礼を言い、門をくぐる。正直、刑務所のネタだけで、そんなに見るべきものないだろうと思っていた。どうせ、子供だましなんだろうと。
そんなことありませんでした。意外と見るもの、ありましたです。現在の裁判、昔の囚人の入浴や食事の様子、網走刑務所の歴史、などなど。
中でもわたしが一番関心を持ったのが、北海道道路建設の成り立ち。服役していた囚人たちが工事に駆り出され、その工事の途中、極寒の地で多くの人たちが亡くなっていったという。
そうだったのか。知らなかった。そんな尊い命の犠牲の上で道路ができたのですね。わたしたちが走れるのもそういった人たちのおかげなのですね。そう思うと、とても申し訳ないというか、ありがたいという思いが募ってくる。罪を犯したとしても、わたしたちと同じ人間であることには変わりない。感謝。
いやー、案外よかった。ここはたっぷり二時間はいましょう。

思いのほか博物館がよかったので、すっかりお風呂に入る時間が遅くなってしまった。ちょっと急ぎましょ。
今日のお風呂は、「網走観光ホテル」のお風呂。さっき電話で訊いたところ、日帰り入浴もOKということで決めたのである。
キツイ坂を上って到着。早速、フロントでお風呂に入りにきたことを告げ、お金を払う。
しかーし、その時、目を疑うような出来事が。なんと、応対した従業員、お釣りのお金をわたしの手に落とすように渡したのである。いや、正確じゃないな。わたしの手の上にお金を落とした、しかも意図的に。そっちの表現が正しい。その上、一切、わたしの目を見ようともせず。
おいおい、マジかよ。驚いた。今どき、そんなホテルが存在しているってことに。というか、ホテルって他の接客業に比べて、お客に対するマナーがしっかりしているんじゃないの。今までそういう認識でいたのですが。これって間違ってます?わたし、接客業に従事したことがあるので、ことのほかこういうことにはうるさいのです。
あーあ、なにこの人。今どきコンビニでも(コンビニで働いているみなさん、ゴメンナサイ。他意はないのです)ちゃんとお金を渡すよ。というか、それが普通でしょ。それが礼儀でしょ。仮にわたしがあっちの筋の人だったとしたら、刃物の一つでもカウンターの上に突き刺してまっせ。「おまえら、何さらしてんじゃ!」って。まあ、実際、そんなことはできないんですけどね。でも、そんな妄想でもしてなきゃ我慢できなかったのです。
しかし、ここのホテルに対する不満はこれでは終わらず。教えられた浴場に行き、露天風呂に入ると、なんと柵には無数の蜘蛛の巣、しかもお湯には虫の死骸まで浮かんでいたのだ。おいおい、なにこれ?お客を不快にさせるという新しいサービスですか?
まったくよー、やる気あんのかよー。みなさん、ここには泊まらない方がいいです。お風呂には入らない方がいいです。
ん?何?もしかして言い過ぎか?いや、これくらい言ってもいいでしょう。というか、こんなところが繁盛しちゃいかんなわ。そういう話なのです。
しかし、そんなとこでも、一つだけよかったことがあった。脱衣所のすぐ横にコインランドリーがあったのである。しかも駅前のより百円安いという。
おお、ラッキー。これでお風呂に入っている間、洗濯を済ますことができる。時間が節約できる。が、喜んだのもつかの間、なぜか乾燥機、かけてもちっとも乾かないのです。一時間もかけているのに湿っぽいって。これ、どういうわけ?以前利用した乾燥機は三十分でも熱々だったのに。なんなんでしょう。性能の違いなんでしょうか。
ランドリーを回している間、日記を書く。ついでにコンセントの差込口があったので、ケータイの充電も。駅前のドコモショップでしようと思っていたのだが、こちらも手間が省けた。
しばらく日記を書いていると、やたらガタイのいい男たちがぞろぞろと入って来た。中には外国人もいる。見るとみなさん、身長百八十センチ以上。でけぇー。頭なんか天井に届きそうだもんなあ。上半身を見ると、こちらもすごい。今にもはちきれんばかりの筋肉がカチンカチンに固く盛り上がっていて、これが見事な逆三角形を描いている。しかも太腿なんか「なに、ボンレスハムぶら下げてるの」と思うくらいぶっとい。
なんなんでしょう、この人たち。大学の体育会系の合宿なのか。それにしても、これだけ揃うと、威圧感がハンパない。さっきまで大威張りで日記を書いていたわたしも、心なしか縮こまったよう。どうやら本能的に恐怖を感じたみたいです。
お風呂から上がってきたおじさんに、あの人たちなんなんですかね?と訊くと、「サントリーのラグビー部らしいよ」と教えてくれた。
おお。そりゃ、すごい。どおりでがっしりしているわけですな。
今日の寝床は、網走刑務所(本物の方)の横を流れている川岸の東屋にしてみた。いやー、刑務所を見ながら泊まるっているのもなかなかできない経験。
しかし、虫刺されがひどくてなかなか寝付けず。こういうことがあるから、テント欲しいんだよね。おかげで結局、「ジブリ作品はなぜ人気があるのか?」というラジオ番組を最後まで聞くことになった。といってもそんなこと、わたしにはわかりません。だってわたし、ジブリ映画ってほとんど見たことないんですから。
2010年7月29日(木) なんでこんな雨の中を走っているんだ? (浜頓別―湧別 156km)
朝方、目が覚める。気になる雨を見るため外に出てみると、ポツポツとだが雨は降っていた。
あーあ、やっぱり雨か。いきなりユーウツ。それにしても、昨日はほんと死ぬかと思ったぜ。久しぶりに身の危険を感じてしまった。
しかし、である。そんな悲惨な目に遭ったというのに、なんと今日から四日連続の雨模様の天気だそうです。昨日、少年がメールで教えてくれた。
は?四日?四日もこんなところにいるの。あり得ないでしょ、そんなこと。
昨日も一昨日も雨。それなのに、これからもずーっと雨。もしかして「おれの後から雨ついてきてないか?」そう思うくらい雨に祟られている。
あーあ、困った、困った。どうしましょ。この雨の中を行くしかないのか?嫌だなあ。かといって四日もこんなところにいたくないし。それにいちいち雨で停滞していたら、ちっとも前に進まない。さらに四日も待っていても晴れるという保障はどこにもないわけだし。
どうしましょ・・・・・・えーい、行ったれ。ここでじっとしていても仕方がない。きっと四日も降らないだろう、予報は外れるだろう、というまったく根拠のない推測を携えて、結局、出発することにした。
走り出してすぐに雨が強くなり始める。時折、弱まったり、強まったりするが、基本的にはずっと降り続いている。さらに、わたしにどんな恨みがあるが知らないが、これが向かい風ときたもんだ。雨がわたしに向かってバチバチと当たってくる。
あーあ、なんてこったい、まったく。出てきたのは間違いだったのか。早くも後悔。

午前十時、雄武の町に到着。ちなみにここ、「おうむ」と読みます。さぞかし一時は大変だったことでしょう。
ところで、今のわたしもけっこう大変な状況にいるのですが。
ま、それはどうでもいいか。この町の人には関係ないし。
しばらく走っていると、一段と雨脚が強くなってきた。まともに目も開けてられない状態。
道路工事をしているおじさんが、「なんでこんな雨の中を走っているんだ?」という顔でわたしを見てくる。
あははは。なんでなんでしょうね。わたしにもよくわかりません。
こんな雨ごときに負けてたまるか、という意地なのか。といっても、何に対する意地なのかわかりませんが。
くそーっ。なんか開き直ってきた。こうなったらどんだけ降ろうが走ってやろうじゃないの。どこからともなく怒りがフツフツと湧いてきた。といっても、何に対する怒りがわかりませんが。
まったくもって意味不明なわたしである。
途中、外国人のバイカーさんとすれ違う。すれ違いざま、サムアップポーズを受ける。こちらも負けじとサムアップ。そういえば、その後、外国人の自転車ツーリストも見かけたが、日本人は一切ナシ。
なんだよー、お前たち。外国人に負けてるやないかい。この軟弱な日本人どもめ。こんな雨の中を走るのはおれしかいないのか。お前ら、雨の中でも走らなくてもいいのか。まあ、いいんですが。
ここまでの印象はまったくナシ。というか辛すぎて憶えてない。あるのは、ただひたすら雨の中を走った、その印象だけだ。
午後三時、紋別に到着。今日はここに泊まろう。そう思ったが、そうするとお風呂の関係で明日は二百キロ近くも走らなきゃあかん。さすがにそりゃ無理。というわけで、再びペダルに足をかける。
途中、一旦上がっていた雨が降り出してきた。あーあ。どうやら今日は、最初から最後まで雨に降られっぱなしのようだ。

午後五時、温泉がついている湧別の道の駅に到着。今日はここの温泉に入って、どこか近くに泊まろうと思います。なみに雨はまだ降っている。あーあ。うっとうしったらありゃしない。
自転車を濡れない場所に置き、中に入る。わーお。いいじゃん、ここ。広いし、きれい。とすると、建ってからまだ間もないのか。浴場へ行くと、こちらもなかなかきれい。すこぶる満足。
お風呂から上がり休憩所へ。おお、ここも広い。いいじゃん、いいじゃん。目の前には広々とした畳敷きの休憩所。何畳くらいあるのかわかりませんが、とにかく広い。
荷物を置いて、長机の横に腰をおろす。ザックの中からスナック菓子を取り出し頬張る。ふと机の上を見ると、そこには食事のメニューが。
あれ?ここで持ち込みの物を食べていいの?不安になり周りを見渡す。すると、お菓子を食べたり、ペットボトルに口をつけている人たちがいた。ほっ。どうやらいいみたいです。
くつろぎながらテレビを見る。
どっひゃーん。一気に目が釘付けになった。なんと今日は北海道全域で大雨だそうです。しかも、これまでわたしが通ってきた島牧、寿都、せたな、増毛が土砂災害などに遭って通行止めになっている。
わーお。えらいことになってるやないか。さすがにただ通ってきただけとはいえ、知っている地名を聞くとちょっと人事ではない感じ。
しばらくそのまま見ていると、「今までここにずーっと住んできたけど、こんなの初めてだわ」とかなりご高齢の女性が半べそをかきながらインタビューに答えていた。なんだか北海道史上屈指の大雨みたいです。
そんな中を走ってきたわたし、果たしてなにかの記念になったのか。
というより、そんなことを思ってしまうわたしは不謹慎なのか。
一人、考えに耽るわたしなのであった。
さて、今日の寝床はどうしましょう。最初は、道の駅の敷地内にある軒下に泊まろうと思ったのだが、先ほどのニュースによると、明日の未明から明け方にかけて大雨が降るとのこと。
うわー、そりゃ、あかん、あかん。寝袋一つで雨に降られた日には、悲惨な目に遭うのは火を見るより明らか。何か建物の中に避難しないと、こりゃ大変なことになるぞい。
となると、やっぱりあそこしかないか・・・・・。いや、実は来る途中、バス待合所を見つけたのです。しかも、トイレも併設されているというこの上なく素晴らしい所なのです。
でも、ただ一つ難点が。そこ、ここから四キロも戻らなきゃあかん場所にあるのよ。しかも、そこまでこの雨の中を走らなきゃいかんという、ちょっとした二重苦。まあ、かといって、寝ていて大雨に吹きさらされたら、それこそ目も当てられないわけで。つまりわたしに選択の余地はないわけですな。
戻りますか。
お風呂に入ったので、なるべく汗をかかないように力をセーブして走る。かといって、あまりゆっくり走っていると雨に濡れてしまう。難しいんだなー、この加減が。
そんなことをしているうちに、無事、今日の寝床であるバス待合所に到着。中に入る。わーお。それにしても広い。これ、ちょっとしたワンルームマンションでしょ。わたし、ここに住めます。もしくはちょっとした宿泊施設か。わたし、三百円までなら出してもいいです。
辺りはすでに真っ暗。誰も来る気配はない。ベンチの上に寝袋を敷き、潜り込む。ラジオを聴いていると、疲れていたのかあっという間に意識がなくなった。
2010年7月28日(水) こりゃ、シャレにならんぞ (稚内―宗谷岬―浜頓別 111km)
いつもと同じく午前四時に起床。眠っているみなさんを起こさぬように静かに出発の準備。すやすや眠っている少年に心の中で挨拶をする。そう、わたしは先を急いでいるのです。たくさん走っておきたいのです。なんでかはよくわからんけど。
外へ出ると、灰色か茶色かどっちか決めろと言いたくなるような、なにやら恐ろしげな稚内の空だった。いやーな予感。
しばらく走ると、案の定というべきかやはりというべきか、道路の電光掲示板に「宗谷北部雷注意報発令中」の文字が冷徹に表示されていた。
なに?朝から雷ですか?昨日は暴風雨、今日は雷。まったくいい度胸していますね。稚内はわたしに恨みでもあるのか。
まずは日本最北端の地・宗谷岬へ向かう。別になにがあるわけでもないだろうが、稚内に来たら誰もが行くことになっている。
一時間半ほど走ると宗谷岬、というよりテレビでよく見た三角形の「日本最北端の碑」が見えてきた。
「おお。いよいよわたしも日本最北端まで来たのか。なにか感慨深いものがあるねー」
なんていうことは思わなかった。
だってふつうの広場ですよ、ここ。日本最北端という名誉がなかったら、単なるふつうの岬でしょ。というより、ただ最北端というだけで、ことのほか重要視されているのが気に入らない。威張っているのが気に入らない。いや、別に威張っていないか。それはともかく、宗谷岬のせいで他の名もなき岬が軽く扱われているのではないか。虐いたげられているのではないか。わたしにはそっちの方が気になる。そう、わたしは心優しき旅人なのだ。マイノリティーの味方なのだ。
なんだかややこしい話になってきました。
とりあえず日本最北端の碑の前で写真を撮ることに。いくらカッコイイこと言っていても、その実はミーハーなんですね。
セルフタイマーをセットし、自転車と一緒にカメラにおさまる。
なんていうのは冗談。わたし、カメラ持ってきてないんですよ。会う人には心のシャッターを切ってるんです、と洒落たことを言っています。早い話、撮るのが面倒くさいだけなんですけどね。
一応、オホーツクの海を眺めてみる。なんでも、晴れた日にはここからサハリンが見えるらしい。
見事なくらいなにも見えませんな。目に入るのは灰色の空と灰色の海。どこにでもありそうな風景。さらに特別感減。
どうやらここはわたしがいるべき場所じゃないみたい。ほかに人はいないし。そりゃそうだ。まだ朝の六時半だもん。
というわけで、宗谷岬を後に。ここからはひたすら北海道を南下いたします。ということはつまり、今まで追い風だったのが向かい風に変わるというとても非情な現実に向かわなければならないわけですな。
おもー。分かりやすすぎるくらい一気にペダルが重くなった。しかも眠気まで襲ってきたもんだ。きっと六時間しか眠っていないのが原因だろう。昨晩は少年と本の話で少し盛り上がったのです。
途中、道の駅があったので、そこで少し寝ることに。ベンチの上にマットを敷き横になる。三十分ほど眠ったが、あまりスッキリせず。あーあ。
再び走り出す。しばらく行くと、大きな看板が目に入った。なんだろう、と思い、自転車を停めて見る。看板にはたくさんの牧場が地図入りで紹介されてあった。
合点がいった。いや、さっきからずっと同じような牧草地が続いていたんですよね。なるほど、あれは牧場だったわけですな。それにしても遥か山の麓までずっと続いている。前を見ても後ろを見てもずっと。まったく北海道の大きさを実感せずにはいられない。
というのは表向き。実はあまりにも同じ景色が続いていて、ちょっと飽きてたんですよ。
国道二百三十八号線を逸れ、エサヌカ線という道路に入る。なんでもここからは長い直線道路が続くらしい。入ってすぐに民家があり、本当にそんな道路があるのか、とちょっと不安になったが、心配なかった。しばらく行くと、真っ直ぐな道路が広々とした牧草地をスパッと切り裂いていた。
ひょえー。ほんと果てしなく真っ直ぐやな。漕いでも漕いでも、まったく進んだ気がしない。しかもまったくといっていいほど車が通らない。距離だけみれば昨日通った日本海オロロンラインよりも短いが、人気の無さならこちらの方が上かも。
途中、反対側車線から一台のワンボックスカーが走ってきた。ようやく現れた車にちょっとホッとする。チラッと車内を見ると、女性二人がわたしに向かって手を振っていた。
よっぽどがんばっているように見えたのでしょうか。
それにしても、うれしー。実は車に乗っている方から手を振られたのはこれがはじめて。なのですごく嬉しい。嬉しいのは嬉しいのですが、ちょっと恥ずかしい気も。
エサヌカ線が終わり、再び国道二百三十八号線に戻る。すると、今度は横から声が飛んできた。
「がんばってー」
見ると、真っ黒に日焼けした小学生と思しき女の子が、わたしに向かって大きく手を振っていた。
本日二回目の、うれしー。
それにしても可愛いですな、女の子は。汚れがないというか、純真無垢というか。あくまでも個人的な意見ですが、子供が、とくに女の子が可愛いのは小学生くらいまでではないかと思っている。それ以上になると、どうもマセて生意気になるんじゃないかと。
小学生の女の子相手なら、学校の先生をやってもいいかな。聞き分けのいい子限定ですけど。無邪気で可愛いらしい小学生に囲まれてお仕事。おお!ワンダフル!さぞかし楽しいんでしょうね。どこが先生募集しているところないですかー。わたし、安月給でも働きます。
果たして十年後、彼女はわたしのことを憶えているのだろうか。夏の北海道を自転車で走っていたわたしのことを。なんていって、明日になったら忘れてたりして。

午前十一時半、浜頓別に到着。なかなかいいペース。この調子なら枝幸まで行けるかな。
コンビニで昼食を済ませ、再び走り出す。すると、ポツポツと雨が降り出してきた。最初はたいしたことないだろうとたかをくくっていたのだが、予想に反して段々雨が強くなってきた。おい、マジかよ。
このまま走れないこともなかったが、昨日のこともあったので高台にある公園に避難。ちょうどうまい具合に東屋があったのです。
しばらく雨宿りしていると、一人のおじさんが車から降りてわたしの元にやってきた。しばし、おじさんとおしゃべり。なんでもおじさんはこの近くに釣りにやってきたのだが、生憎の天気なので諦めてこれから家に帰るそうです。
ふーん、そうですか。おじさんはこの雨の中、一人、わたしを残して帰るんですね。いいんですかね、そのまま帰っちゃって。まー、いいんですけど。
おじさんの後姿を恨めしく見送りながら、一人、東屋の下でたたずむ。雨は相変わらず降り続いていたが、空はいくぶん明るさを増してきた。こりゃ、もう少しすれば雨も上がるかな、と思っていたら、今度は黒い雲が辺りを覆い始め、みるみるうちに雨脚が強くなってきた。あっちゃー。こりゃ、ちょっと移動するのは無理か。もしかして、今日はここで野宿かも。そんなことが頭に浮かぶ。
万が一に備えて宿泊体勢を頭の中でイメージ。まずはテーブルの上にマットを敷く。次にその上に寝袋を広げてみる。足はテーブルからはみ出しそうだが、とりあえず寝れないことはない。まあ、いいや。いざとなったらここで泊まることにしよう。
そんなことをしているうちに、さらに雨脚が強くなってきた。そしてあっという間に滝のような雨に。目の前は一面雨のカーテン。見事に遮られて、周り何も見えず。
おいおい、マジかいな。こりゃ、シャレにならんぞ。まさか本当に今日はここで野宿か?
そうこうするうちに今度は山の方でピカッと光った。同時にドカーンという音も。うわっ!雷じゃん!それもすぐ側。地面、揺れてましたよ。
あちゃー。豪雨に雷。いよいよシャレにならんぞ、これは。わたし、完全にビビッています。あまりの怖さにちょっとオシッコちびりそうだったので、トイレに行く。しかし、東屋から一歩外に出ただけで一瞬にしてずぶ濡れになった。
うわっ、なんだよ、これ。わたし、泣きそうです。用を足して、急いで東屋と戻ると、状況は更に大変なことに。わたしが寝ようと画策していたテーブルが雨でぐしょぐしょに濡れていたのである。そう、雨が猛烈な勢いで東屋の中に吹き込んでいたのだ。そして、今わたしは一身にその雨風を受けちゃっている。こうしている間にも、どんどん雨が吹き込んでくる。相変わらず雷も。どうしましょ、どうしましょ。おろおろするわたし。
おーい、助けてくれー。誰かいないかー。
当然、いるわけないのですが。というわけでジ・エンド。
うわー。ここで寝るなんて無理。というかこのままいたら死ぬかも。一瞬、「死」の文字が頭をよぎる。いや、冗談じゃなくマジで。後から思えば、きっと本能でそう思ったんでしょうね、理屈うんぬんじゃなくて。
これ以上ここにいたら危険と感じたわたしは、雨脚が弱まったのを見計らって(といっても、まだ地面に打ちつけるような雨だったが、それでも幾分まし)、来た道を引き返すことに。実は、来る途中にバス待合所があったのだ。北海道のバス待合所は、寒い冬と多い雪のためちょっとした小屋のようになっている。そう、そこに避難しようという考え。そこまでの距離、およそ三キロ。うりゃー。雨の中を必死に走る。ずぶ濡れになりながらもようやく到着。
すぐにドアを開けて中に入る。お世辞にもキレイとは言えないが、今はそんなことは言ってられない。ちゃんとした屋根、壁がついているだけでありがたい。これならいくら雨が降ろうが大丈夫。とりあえず濡れた衣服を着替え、ベンチの上にマットを敷き、寝袋を広げその中にくるまる。寒くはなかったがなにかに包まれたかったのだ。
ケータイを見ると午後四時。さすがにまだ寝るのには早いので日記を書くことに。すると一時間ほどで眠気が。ウトウトしているうちに意識がなくなっていった。気づいたら時刻は午後七時を回っていた。ということは、二時間ほど眠っていたのか。しばらく目を瞑ってボーっとしていたが、またもやウトウト。そしてまた眠りの底へ。よっぽど疲れていたのか、いや、きっと安心したせいだろう。その日はそれから一度も目を覚ますことなく眠っていた。
2010年7月27日(火) 誰が行こうなんて言いだしたのは (天塩―稚内 90km)
夜中、トイレに行くために起きる。立て付けの悪い引き戸のドアを開けると、ドーンと猛烈な風がぶつかってきた。うわっ。あぶね、あぶね。あまりの風の強さによろけてしまう。しかも風だけじゃなく雨も降っているときたもんだ。
ひえー。とてもじゃないけど今日は走れないなあ。うーん、どうしよう……困った。といってもこの雨じゃどうしようもない。
あーあ、今日は一日停滞かよ。まあでも、しゃーないわね。
用を足してライダーハウスに戻り、再び寝袋にくるまる。とりあえず寝ましょ。だってそれしかすることないんだから。
夜が明けて午前六時。目が覚め、寝袋から這い出し、不安げに窓の外に目をやる。どうやら雨は降っていないよう。しかし、今にも泣き出さんばかりの雲が空を覆いつくしていた。外に出る。相変わらずの強風。それに生暖かい空気。そしてこの空。
なんかやけに台風が来る前に似ているんだけど、気のせいか?
でも、たしか北海道には梅雨と台風はないはず。いや、梅雨はあった。今年がそう。身を持って確認しました。
さて、この天候の中、行くべきか行かざるべきか。悩むところ。
・・・・・・まっ、行きますか。五分五分だったら、行くね。こんなところで一日中過ごしていたくないし。
みなさんも、行きましょう。そう言うわたしに同意したのかどうかわからないが、どうやらアメリカさんも、少年も、日本一周中のお嬢さんも出発するようです。よし、四人なら心強い。さあ、みなさん、頑張ろうではありませんか。
しかし、走り出してすぐにバラける。というか、それも致し方ない。だってこの統一性のないメンツ、バラエティに富み過ぎ。
冷静に見て、一番走力があるのはトライアスリートでもあるアメリカさん、次に年の功でわたし、続いて少年、最後は女性ということもあってお嬢さんか。みなさん、無理せず自分のペースで走りましょう。
いよいよこれからは家も信号もなにもない日本海オロロンラインに入っていく。ちなみにトップを行くのはわたし。アメリカさんはまだコンビニにいて、後から追っかけてくるそうです。
うーん、このまま走っていてもなんか面白くない。誰かを追っかける形の方が走りがいがある。というわけで、ハンディとばかりにトイレを備えた休憩施設の建物に寄ることに。そこのベンチに座って菓子パンをかじりながら日記を書いていると、アメリカさんが走ってくるのが見えた。手を振るわたし。それに気づいたらしくアメリカさんがこっちにやって来た。いや、別に呼んだわけじゃないんですが。
アメリカさんがわたしに向かって何か言っている。が、理解できない。「何しているの?」と言っているのだろうか。「アイ・アム・ライティング・ア・ダイアリー」とペンで字を書くジェスチャー付きで言ってみる。うなずくアメリカさん。どうやら通じたようです。
さて、そろそろ行きますかね。自転車にまたがり漕ぎ始める。しばらく走り、ふと思う。なにもないところと聞いていたから、どんだけ寂しいところかと思っていたが、意外とそういう感情は湧いてこないのだ。
たしかに家も信号も何もない。だだっ広い中をわずか一本の道路が通っているだけ。しかし、思っていたよりトラック、乗用車、けっこう多くの車が走っているのである。おそらく稚内へ通勤したりしている車なのだろう。
アメリカによくあるような荒涼とした大地を一人ポツンと走る、そんなところを想像していただけにやや拍子抜け。
ただ、走りに関して言えば実に楽しめた。昨日と同様追い風。しかも、信号のない直線道路。ペダルを漕げば勝手にスピードが出る。「誰か後ろから押していない?」そんな感じで実に楽。六十キロも及ぶこんなところ、内地にはないもんね。
ここを堪能しようと必死に漕ぐ。いやー、実に気持ちいいだべ。このスピード感がたまらない。
しばらく行く。右手に昨日見たような風力発電の風車が一直線に並んでいた。しかし昨日と違うのはその数。ざっと見ただけでも二十基以上はあるだろうか(後でツーリングマップルを見たら二十八基と書いてあった)。いやー、これが実に壮観&圧巻な眺め。まるで風車が天高くそびえたつ杉の木のようなのだ。なにか見ているだけで、心がすーっとしてくる。心が洗われてくる。実に清々しい。天気は悪いけど。

途中、先行していた少年とアメリカさんと合流。後からやって来たお嬢さんは休憩しているわたしたちを尻目にそのまま先へ行ってしまった。え?マジ?休んでいかないの?すげぇ、タフ。
三人で話をしていると、そこに一人のおじさんツーリストやってきた。四人でノシャップ岬を目指すことに。少年は少し嫌そうでしたが。
ところが、これが大変なことに。さっきまでパラついて雨がいよいよ本降りの様相を呈してきたのである。ひょえー。マジかいな。
あまりの雨の多さに上着を羽織ろうと、バックにムーンストーンのジャケットを探す。が、ない。ない。どこにもない。おーい、どこだよー。どこなのよー。返事してくれー。
返事、ありません。というかなぜないんだ?もしかして、どこかに忘れたか。
あー、ひょっとして……思い出した。きっとライダーハウスだ。昨日寒くてバックの中から取り出したのだが、肝心なことに入れた覚えがない。うわー。マジかよ。これから取りに戻ることも一瞬頭をよぎる。が、ここまでですでに四十キロほど走ってきている。しかも戻るとなるとこの雨の中を走らなあかん。うわー、さすがにそれはイヤッ。それは無理。というわけで、ゴメンナサイ。可哀相なジャケットはおきざりにされることになりました。合掌。
で、雨である。この頃になると、さらに雨脚が強くなってきた。目の前ではあまりの激しさに雨煙が立っている。道路は水溜りを通り越してまるで池のよう。視界はゼロ。体はずぶ濡れ。目も開けてられない悲惨な状況に。
バケツをひっくり返したような雨というが、まさにこのことか。しかも悪いことに風の勢いが増してきた。前から横から後ろから、いろんなところから雨が当たってくる。結果、四方八方からバケツのような水を浴びることに。あはは。なんだい、これ。何かの罰ゲームかい?しかもタイヤが蹴り上げた水しぶきがモロに顔にかかる。ぶわー。口に入った雨を吐き出す。チクショー。おれがいったいなにしたっていうんだよー。ひどい、ひどい。ひどすぎます。
とりあえずどこか雨宿りできる場所はないのか。周りを見るがなにもない。そっか、ここはなにもないところだった。先を走るしかない道はないのだ。もー、悪夢。夢なら覚めてくれー。だいたいよ、誰が行こうなんて言いだしたのは。わたしか?いやすまない。

なんとかノシャップ岬に到着。が。先を走っていたはずのアメリカさんとおじさんの姿が見えない。とりあえず岬の突端へ向かう。途中、トイレがあったのでそこに一時避難。
ひぃー。それにしてもいったいどうなっているんだ、この天気。これ、暴風雨を通り越して台風でしょ。北海道には梅雨だけじゃなく台風も来るのか。
もう一歩も先に進めない。しかし、このまま立ち去るのは悔しい。突端まで行かなきゃ、なんのためにこんな思いをしたのかわからん。意を決して外へ通じるドアを開ける。ブワーッ。ものすごい雨風が吹き込んできた。一瞬よろけるが、必死に体勢を立て直し、歩を進める。残り五メートル。なんとかノシャップ岬の看板の下に到着。看板を握って「やったぞー!」とガッツポーズ。するやいなや、一目散にトイレへ逃げ込んだ。
ほどなくして少年がやってきた。おお、思ったより早かったじゃん。
「もう必死になって漕ぎましたよ」
少年は海にでも浸かったんじゃないかと思うくらいずぶ濡れだった。水が頭から滴り落ちている。よく頑張った。エライ、エライ。君は成長するよ。
「ところで、おじさんとアメリカさんは?」
そうなんです。いないんです。ちょっと探してくるわ、と少年に言い残し、外へ出る。相変わらず尋常じゃない風雨。少し行くと、食堂の脇におじさんの自転車が停まっていた。中に入ると、おじさんだけじゃなく、なんともまあ、お嬢さんもいた。どうやら食事していたみたいです。
おじさんにアメリカさんの行方を訊くが、「わからない」とのこと。もー、いったいどこに行っちまったんだよ、アメリカさんは。
おじさんはこの先にあるユースホステルに泊まるそう。仕方ない、われわれは北防波堤ドームを目指すか。なんでもそこは夏になると多くの旅行者がテントを張って泊まる有名な場所らしいのです。今日はそれに倣って、そこに泊まろうと思っているのです。
そこまでの距離、わずか四キロ。しかし、今はその四キロがとてつもなく長い。雨が容赦なく体を打ちつける。がんばって走りたいところだが、ノシャップ岬に着いて気持ちの糸が切れたのか、いっこうに足に力が入らない。もういい、なんか走る気しない。頼む少年よ、先に行ってくれ。ここはおまえに任せた。わたしは後からゆっくり行きまするので。
目の前を雨が流れ落ちる中、走る。しばらく行くと、港の方に北防波堤ドームが見えてきた。その形はまるで巨大なトンネルを半分に切ったかのよう。それにしても、でかっ。想像していたよりはるかに大きい。近づくとその大きさがさらに実感させられる。
しかし中に入ると拍子抜け。どのくらいたくさんのテントがあるのだろうと思っていたのだが、なんとあるのは一張のみ。でも、それもそのはず。だって下のコンクリートが濡れているんだもん。よく見れば見事なくらい四十五度の角度で雨が吹き込んできている。しかも港に打ち寄せる波が風によって吹き上げられ、ドームの中まで運ばれてきている。
おそらく通常の雨なら、ここで泊まるのもアリなんでしょう。でも、今日のような暴風雨ではとんでもない。
ふわー。どうしよう、こりゃ参ったなあ。無理でしょう、ここに泊まるなんて。でも、ここしか泊まるところ考えていなかったし。いまさら他の場所なんて思いつかん。
そんな不安げなわたしをよそに少年はここに泊まってもよさそうな顔をしている。そりゃいいよ、おまえは。テントあるからね。少々の雨なら屁でもない。でも、寝袋のみのわたしのことを考えてみ。ちょっとの雨が吹きこんだだけでも濡れてしまう。想像しただけでもこわっ。いやいや、やっぱ無理、無理。とてもじゃないけど、無理。少年よ、悪いがここは諦めておくれ。
「稚内にネットカフェはありますか」
犬の散歩をしていた女性がいたので訊いてみた。でも、顔を見ただけでないことがわかった。だって、わたしが言い終わらないうちに見る見る顔が曇っていくんだもん。で、返ってきた答えはまさにその通り。まあ、なんとなくそんな気はしていたけど。稚内はネットカフェがあるような大きな街ではないんですね。
少年と相談した結果、今日もライダーハウスに泊まることに。正直、余計なお金は遣いたくないが、この雨だ、そうも言っていられない。わたしだってまだ死にたくない。

手持ちのお金が残り少ないので銀行へ。中に入り、ATMコーナーへ向かう。キャッシュカードを入れ、暗証番号を押す。が、押してもまったく反応しない。え?なんで?番号を間違えたかなと思い、頭の中にいつも押している四桁の数字を思い浮かべる。よし、これでいいはず。もう一回押す。今度は一つ一つ丁寧に。でも反応ナシ。心が泡立つ。もう一度やってみる。先ほどよりさらに丁寧に押す。でもダメ。え?なんで?
カーッ。一気に体が熱くなった。と思ったら、今度は急にスーッと血の気が引いてきた。
おいおい、マジかよ。財布には英世ちゃんが三枚しか入ってないんだぞ。このままお金がおろせないとなると、今日はメシ食ったり風呂入ったりできないかもしれない。いや、そんなことをしていたら肝心のライダーハウスに泊まれない可能性も……。
荒れ狂う暴風雨の中、軒下で一晩過ごすわたし。
ゾーッ。想像したくねー。というかなんでだ?番号は間違っていないはず。おかしい。なにかがおかしい。焦るな。とにかくここは冷静になれ。落ち着け。まずは落ち着くんだ。ふーっ。はーっ。息を大きく吸って、大きく吐く。そんなことをしているうちに被っていた帽子のつばから雨滴がポタポタ落ちてきた。
・・・・・・ん?もしや・・・・・・。もしかして指が濡れていて、センサーが感知しないのかも。
早速、指をこすって押してみる。すると、今度はちゃんと反応した。
うわー、よかった。ほっとした。これで一安心。マジで焦ったよー。
途中、自転車屋に寄る。なんでもサドルが少年のお尻に合わないらしく、調整してもらいたいとのこと。あはは、そうですか。まあ、いいや。ちょうど雨宿りもしたかったしね。
すると、なんとそこにはお嬢さんがいた。おお、久しぶりです。といっても、さっき会ったばかりですが。
どうもお嬢さんは自転車の点検をしてもらっているよう。なんでもこうやって定期的に自転車屋に寄っては診てもらっているそうです。さすがです。きっとこれくらいやらないと日本一周なんてできないんでしょうね。それにしてもなかなかの気の遣いよう。
「おいおい、誰かさんもこのくらいやれよ」なんてことを思わず言いたくなる。わかっているとは思いますが、わたしのことです。すいません、反省します。
少年のサドルの具合もよくなり、お嬢さんの点検も終わったのでいざ出発。
ところでお嬢さん、今日はどこに泊まるのだね?ちなみにわたしたちはこの近くのライダーハウスで泊まるんですけど。
「まだ時間も早いのでもう少し走ろうかなあって」
お嬢さんはニコニコした顔をこちらに向けてきた。
ええっ、マジで?あんな鬼のような雨を体験しておいて、まだそんなことをのたまうのですか、あなたさまは?
いやー、びっくりした。おったまげた。さすがダテに日本一周してないわ。マジで感服。それではくれぐれも気をつけて行ってください。わたしたちはダメ。そんな気力ナッシングです。

自転車屋のおじさんに教えてもらい、無事、目指すライダーハウスに到着。そこには、国の重要文化財に指定されているんじゃないかと思うくらいひなびた建物が鎮座していた。
というのは皮肉。早い話、平屋建てのボロ屋。これ、築何年でしょう?不明。というか考えたくない。
うわぁ、マジ?マジでここに泊まるのかよ。嫌だなあ。というか、こんなところにお金を払うことが馬鹿馬鹿しい。納得できない。そりゃねえ、雨が凌げるのはありがたいけどさあ。
じゃあ、野宿する?
そうね。そう言われたらおとしなくするよりありませんよね。すいません、泊まらせていただきます。
宿帳に名前と住所を書く。ほどなくしてオーナーがやってきた。宿代六百円を徴収し、宿についての説明や周辺情報を教えてもらう。ついでにここのライダーハウスの特製シールをもらう。ありがとうございます。といっても、全然欲しくはないのですが(案の定、すぐに紛失。あはは)。
中に入ってみると、びっくり。予想に反してきれいに片付いていたのである。しかも一番汚れていそうなトイレや台所もきれいにしてある。よっぽど気を遣って使っているのか。まったく外からは想像ができない。外観からしてモノが散乱していると思っていたのです。
なんだか臭ってきそうな畳に腰をおろす。奥の方を見ると、年齢不詳のおじさんが二人、置物のように転がっていた。身なりはあまりきれいとは言いがたい。それにしても二人、馴染み過ぎ。だって部屋の風景と一体化しているんだもん。なにやら長期滞在者の臭いが。
そういう人たちって変わっている人が多いと聞く。そりゃそうだ。旅に出てきているのに、ずっと同じところにいるのだ。まともな旅行者のすることとは思えない。
ちょっと怖いなあ。正直、声をかけづらいなあ。なんて思ってもさすがに挨拶くらいはしないと。意を決して挨拶。よろしくお願いしまーす。すると意外にも気さくに挨拶を返してくれた。しかもこちらの質問にも実に丁寧に答えてくれる。勘違いでした。案外いい人たちみたいです。
さて、まだ午後三時。うーん、これからどうしようかね。まっ、やることはたくさんあるんですけどね。洗濯とか、メシとか、風呂とか、日記とか。
とりあえずメシですかね。といっても、昼メシにも晩メシにも非常に中途半端な時間。少年と相談した結果、昼メシは抜きにして、晩メシを外で一緒に食べることにした。
それまでなにしましょうか。まあ、風呂ですか、ここは。雨で体濡れているし。少年に、行く?と訊くと「行く元気ないです」とのこと。いい、いい。君はいい。ゆっくり休んでなさい。というわけで一人でお風呂に行くことに。なんでも稚内港の近くに温泉があるとのこと。
自転車を港へ走らせる。外はさっきの豪雨がなんだったかと思うような小雨。というかほとんど上がっている。おいおい、もうちょっと待っていれば、あんな豪雨に遭わなくてすんだのかよ。自分のツイてなさに肩が落ちる。
十分ほど走り、稚内副港市場に到着。この二階に「港のゆ」という温泉がある。自転車を停め、中に入ると、ある一箇所に人だかりができていた。近づいてみると、どうやらラジオの公開放送らしい。ミュージシャンらしき男性がインタビューに答えていた。しかし、全然知らない顔。稚内のスターなのか?
二階に上がり、温泉へ向かう。それにしてもドキドキ。いやー、入浴料がいくらかなあと思って。えらい高ければ嫌だし。まあ、五百円以内ならOK。それ以上ならちょっと高い。ちなみに今までの最高は八百円というわたしにはあり得ない値段。さて、ここは……残念。七百円でした。あーあ。
フロントで料金を払い、浴場へと続く廊下を歩く。いたるところにロシア語の文字が。そっか。稚内とロシアはご近所さんなんですね。
脱衣所で服を脱いでいると、早速、ロシア人に出くわす。おお!でかっ。身長は百七十センチのわたしよりもはるかに高い推定百九十センチ。髪は金髪だがきっちり七三に分けているという外国人らしからぬ不思議な感じ。体は肉体労働者を思わせるかのような筋骨隆々。船舶関係の人なのか。ちなみに胸毛もしっかり金色でした。ということは、下の方も……やっぱり金色。というのはウソ。さすがにそこまで見る勇気はないのです。ホモと勘違いされても嫌だしね。
裸になり浴場へ。さすがに七百円は取りすぎだろうと思ったが、意外にもこれがよかった。広々として、きれい。しかも浴槽の数が多くて大きい。さらにダメ押しで露天風呂がついている。ここ、わたしが北海道で入った中で一、二を争う温泉かも。
許す。これで七百円なら許す。
引き戸を開け、露天風呂へ。わーお。稚内港が目の前に見えるのです。古びた倉庫群に錆が目立つ漁船。その上を飛んでいる海鳥の群れ、群れ、群れ。って、多すぎだろ、これ。ここまで多いと逆に気味が悪い。ヒッチ・コックの『鳥』を思い出してしまった。
しかし、そんなマイナスポイントを差し引いても、いいね、ここ。いかにも港町という感じがします。風情があります。ここには「港旅情」という演歌が似合いそう。
お風呂から上がり、休憩室へ。ゆったりとした大きな椅子に腰を下ろす。フカフカして実に気持ちいい。あまりの気持ちよさについウトウト。いかんいかん。少年と晩メシの約束があるのに。
そのまま戻るのもつまらないので、稚内フェリーターミナルに行く。いや、とくに用事はないのですが。
行ってびっくり。人が誰もいないのである。ロビーは実に閑散。さびしー。
なんでこんなに人がいないのか、と思っていると電光掲示板に「利尻島大雨洪水警報」の文字が。
あちゃー。どうやら、わたしはとんでもない時に来ちゃったみたいです。

ライダーハウスに戻るとビッグニュースが待っていた。なんと、少年がアメリカさんに会ったそうなのだ。ええ!ウソ!マジで?
少年によると、なにげなく窓から外を見ていたら、自転車に乗ったアメリカさんがいたというのである。おお、何たる偶然。それはそうとアメリカさん、ユーは今までどうしていたわけ?
後で聞いた話によると、ノシャップ岬に到着したアメリカさん、そのまますぐに北防波堤ドームに行ったのだが、雨で体が濡れたので近くの温泉に入ったそうです。
え?ということは、なに?われわれのことは置いて自分だけ気持ちよく入浴していたのですか?
おいおい、こっちはあれから探したんですぞ。まったくもー、アメリカ人は自由なんだから。
その後、お風呂から上がったアメリカさんは、きっとわたしたちがライダーハウスに泊まっているだろうと推測して(その読みは正しかったわけですな)、稚内にあるライダーハウスをあちこち探しているうちに少年と会ったそうです。
ちなみにアメリカさん、今夜は別のライダーハウスに泊まるそうです。
ふーん、そうなんですか。わたしたちと一緒に泊まらないのですね。
アメリカさんいわく、そこはここより料金は高いがきれいとのこと。
うん、正解。だったらそうした方がいい。わたしもお金に余裕があるのならそうしてますって。
夜、アメリカさんを加えた三人で夕食を食べるため稚内の街へ。
わたしとしてはお金がかかる外食は避けたいところだが、三人揃って食事をするのもおそらくこれが最後。なによりあの暴風雨を乗り越えてきたんだ、そのご褒美としてもバチは当たらないだろう。というわけで、この旅初の外食。
場所はツーリングマップルに載っていた「ボリューム亭」。いかにも量が多そうな旅行者向けの名前である。それにつられて選んだのは、そう、わたし。お店名物のハンバーグを美味しく頂きました。
その後、ライダーハウスに戻り、洗濯を済ます。それから少し少年と話をし、十時に就寝。それにしても今日はハードな一日だった。もう二度とこんな思いはゴメン。




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